在庫処分?

「俺が冒険中に手に入れた魔石とかです」


「それは……うん、何となく解る。でも、なんでこれを私に?」


「お土産みたいなものですよ。リースさんは錬金術も出来るから、新しい杖を造ったりするのに使えるかなと思って」


「いや、確かに使えるけど……」


なんで? という思いが強い。

袋の中に入っている魔石はEランクやDランク程度の魔石だけではなく、Cランクの魔石が多く、数は少ないがBランクの魔石も混ざっている。


「……売って自分のお金にしなさい」


「お金は森林暗危で十分に稼いだんで大丈夫ですよ」


それを言われてしまうと、あまり反論出来ない。


モンスターと討伐して素材や魔石の売却に加えて、ダンジョンでは宝箱という文字通りお宝がある。

宝箱の中には硬貨も入っている為、稼ぐ方法が二つある。


「親方にもたくさん素材や鉱石を渡したんで、それはリースさんの自由に使ってください」


「一応シーア意外にも魔法が使える子は何人かいるけど……ティール、本当に貰っても良いの?」


村にいるだけでは手に入らない魔石が多いため、個人的には欲しいという思いはある。


師の問いに対し、ティールは満面の笑みで応えた。


「はい、勿論です!!!」


「ありがとう。実はね、シーアもティールと同じで魔法だけじゃなく、錬金術の才能があるのよ」


「へぇ~~、それは凄いですね……どうせなら、もっと魔石要りますか?」


ありがとう、もしくは大丈夫だとリースが返答するよりも速く、ティールは亜空間の中にしまっていた大量の魔石、モンスターの素材などを取り出した。


「だいたいEランクからDランクモンスターの物なんで、好きに使ってもらって大丈夫ですよ」


「ッ…………」


シーアはリースからある程度一般常識も教えてもらっている為、目の前の光景が……どれだけ異常なのか理解出来る。


(こ、この人……何者?)


同年代の子よりも聡いところがあるため、得体の知れない能力に震えるシーア。


「……えっと、貰って良いのね?」


リースはもうティールの頭おかしいっぷりに慣れている為、特に驚かない。


「はい。俺としても整理が出来たんで有難いです」


「全く……仮に魔法の才がある子が増えたとしたら、そこら辺の街よりも高い戦力を有しそうね」


「さっきジンさんも同じような事言ってました」


「やっぱりそこが心配になるわよね~……ところでティール、あなたって意外と他人に教えるの得意よね」


「いや、そんなことないと思いますけど」


本人は否定するが、リースはティールにそっちの才能もあると確信している。


そして隣に立つラストは口には出さないが、リースと同じ意見だった。


「大丈夫よ。あたなが思ってるより、教育の才能がある。だからね……学園に行って、教師の真似事でもしてみない」


「……………………丁重にお断りします」


「あれ?」


師であるリースからの頼みということで、真面目に考えた。

冒険者という職業に就いていれば、その人の性格や実力によって、そういった依頼を受けることもある。


リースの提案も、ティールが了承すればギルドを通しての依頼となり、キャリアを積むことが出来る。


冒険者にとって、決して悪くない依頼内容。

ただ……ティールは村を立ってからの間、ただモンスターと戦い続けてきた訳ではない。


「リースさん。俺もバカではないんで、色々と学んで来たんですよ。相手が五歳とか六歳ならまだしも……学園の生徒というと、十三歳や十四歳……もしくは十五歳や十六歳の生徒が相手ですよね」


「そ、そうね。多分そういった年齢の子たちが教える相手になると思うわよ」


「俺……本当にここ最近の話なんですけど、歳上の冒険者と殺し合いに発展しそうになったんですよ」


ティールなら歳上が相手でも余裕で勝ってしまいそうなので、逆にちょっと相手が心配になる。


「加えて、同世代の奴らとも全員仲良くなったわけじゃなくて……というか、この村に居た時から軽いいざこざがありましたし」


「あぁ~~~~……そ、そうね。確かにそんなことあったわね」


「思い出してくれてなによりです。と言う訳では、俺のストレス的な問題でそういった依頼は、よっぽどの報酬がない限り受けたくないんですよ」


丁寧に細かく、ここまで適切な理由を述べられては、師としても何も言えなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る