こいつは例外

「あっ、ジンさん。夕食後ぐらいの、自警団の人たちを連れて、親方の元へ向かってください」


「おやっさんの仕事場にか? なんでだ?」


「実は……」


ティールは親方に頼んだ仕事内容を伝えた。


すると、ジン……よりも、指導を受けていた子供たちの方が盛り上がっていた。


「おいお前ら、盛り上がるのは勝手だが、おやっさんが造った装備を受け取れるのは自警団として動いてる奴らだけであって、お前たち候補生にはないぞ」


「「「「「「ッ!!!???」」」」」」」


ジンの言葉を聞き、ロウを含む候補生たちの表情は愕然。


ティールに救いの眼を求めるも、苦笑いを浮かべるだけ。


「バ~カ。当たり前だろ。お前らがそこそこ頑張ってんのは認めるが、ガキの内から真剣を使うなんて、無茶も良いところだ」


「で、でもティールさんは子供の頃から使ってたって!」


「ティールをお前らと一緒にすんな。そういうのはな、石ころを投擲するだけで雑魚をしっかり殺せるぐらい強くなってからもう一度言え」


雑魚とはいえ、モンスターを石ころでの投擲で瞬殺。


これがまた誇張された嘘ではない為、候補生たちはティールとの差に若干絶望。

しかし、自分のそういった話を信じてくれている子供たちに、ティールは僅かな希望を伝えた。


「えっと、皆は皆で出来ることがあるから、実際にモンスターと遭遇した場合、どういった手順で倒すかを考えるだけでも色々と変わってくると思うよ」


「実戦になったら思い通りにいかねぇなんてザラだけどな」


「ジンさん……」


ティールがそれらしいアドバイスをロウたちに送るも、ジンが事実ではあるものの、候補生たちのテンションが下がる言葉をぶっこんでくる。


「ラストはこう……良い感じのアドバイスはないか」


「…………」


主人からの要望に応えるため、ラストは数十秒の間全力で悩み、どうすれば彼らが雑魚モンスターを討伐出来るか……一応それらしい答えを導き出した。


「目があるモンスターは、そこを潰されると、途端に行動が大雑把になる」


「同時に痛みもあるから、数秒の間は動きを制限出来るかもしれないね」


「マスターの言葉通り、大きな隙が生まれる。そのため、木剣……もしくは木槍で挑むのであれば、まずそこを潰すのを勧める」


ラストのアドバイスはそこで終わらず、しっかりと続きがある。


「ただ、敵も向かってくる攻撃に対して避けるという選択肢がある。その時、モンスターが反撃して来ようとした場合、このように対処する」


突きのモーションを行ってから、外れたという仮定で蹴りを叩きこむ。

それを素早く三パターン、候補生たちの前で実演。


(ひゅ~~、流石ティールの相棒だな。動きにキレがあるぜ)


ジンは動きのキレ、対応策に関して賞賛を送る。


「お前たちはまだまだこれから大きくなる。体が大きくなれば、自然と蹴りのリーチも伸びる。カウンターを防ぐ選択肢としては一つの手だと思うぞ」


「「「「「「「は、はい!!!」」」」」」」


現役冒険者からの貴重なアドバイスを受けた子供たちは、早速ラストの動きを必死に真似し始めた。


「良いアドバイス内容だな。んで、ティール先輩からはもうアドバイスはないのか?」


「今の状態でアドバイス出来る内容って結構限られてると思うんですけど……まぁ、強いて言うなら実戦の時は足場や周囲の状況気にするぐらいですかね」


本当にティールが追加でアドバイスを口にしたことで、候補生たちは直ぐに動きを止めて集合し、先輩の言葉に

耳を傾けた。


「今こうやって特定の状況を想定して訓練するのも大事だけど、さっきジンさんが言った通り、いざ実戦になると思い通りに事が運ばない場合がある。その要因の中でも一番なのが、周囲の状況だと僕は思ってる」


村の中ではティールの言う通り、実際の戦場を想定した訓練が行えない。


「ティール先輩の言う通りだぞお前ら。お前らがこれからどういう道に進むのかは知らねぇが、体だけじゃなくて頭も鍛えていかねぇと実戦じゃあっさり死ぬからな」


「「「「「「「はい!!!」」」」」」」


師たちからのアドバイスを受け、候補生たちはより一層訓練への集中力を高めた。

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