何故襲われた?

「でもよ、ティールだってもう冒険者として十分成功してるだろ。それなら、ティールに言い寄ってくる女の冒険者もいるんじゃねぇか?」


「いやぁ~、どうですかねぇ~~。俺が成功してれば、必然的に隣に居るラストだって成功してることになるじゃないですか」


「あぁ……そうなっちまうのか」


「俺が成功しているのは、マスターのお陰なのだがな」


ラストは日々の生活だけで十分満足している為、あれこれ色恋に何かを求めるつもりは、今のところない。


「お前が毎日の冒険で頑張ってる成果だっての……でもあれですよ、俺も冒険者として活動してて、気になる人とかはチラホラ出来ましたよ」


ただの会話の種ということで、ティールはサラッと伝えた。


「「ッ!!?? マジかよ(ですか)!!!!」」


しかし、ティールが強くなろうとした理由を知っている二人からすれば、非常に驚くべきビッグニュースである。


「おいおい、もっと枠しく教えてくれ! あとつまみ追加だ!!」


「はいはい。分かりましたから落ち着いてください」


亜空間から肉と先に街で買っておいたエールとワインを取り出し、飲み物は冷やして二人に渡す。


「おう、気が利くじゃねぇか」


「ごめんなさいね、気を使わせちゃって」


エルフであるリースとしては、エールよりもワインが好みであり、ティールが土産として買ってきたワインは非常に美味であり、吞む手が止まらない。


「にしても、金は大丈夫なのか? そこら辺ズボらだとは思ってねぇけど」


「お金なら、少し前に森林暗危という名のダンジョンで活動してたんで、たくさんお土産を買っても結構余ってますよ」


「森林暗危……どっかで聞いたことがある名前のダンジョンだな。階層はどれぐらいなんだ」


「階層数はそこまで多くなく、十五階層です。ただ、十五階層のボスはアサルトレパードです」


「ッ……あの厄介な豹か」


アサルトレパードとの戦闘経験があるジンは、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。


そんなジンの様子に、ラストは深く共感した。


「ちなみに十階層のボスは三体のオークとリベンジオークでした」


「うげ、あのオークかよ。あの豚、いつ溜めたダメージを使ってくるか分からねぇから嫌いなんだよな」


「私はそもそもオーク全般嫌いね」


オークというワードが会話に浮上したことで、氷の様な目でここにはいない敵を睨みつけるリース。


「え、えっと……あっ、そういえばそこではヤドラスの遺跡で遭遇した連中とは違って、本当に俺の命を狙って来た暗殺者と遭遇しました」


「「ッ!!??」」


ティールは少し気まずくなった雰囲気を変える為に、ダンジョン内で短剣、双剣、短刀を持った暗殺者に狙われたというあまりよろしくないイベントを話し始めた。


当然、気まずくなった雰囲気は……確かにぶち壊れた。


しかし……二人からすれば弟子が暗殺者に狙われたという話は、笑って済ませられる話ではなく、驚きのあまりエールとワインを吹き出してしまった。


「お、おま、大丈夫だったのかよ!?」


「あ、はい。幸いにもヤドラスの遺跡で遭遇した黒衣の四人組よりは断然弱かったんで、全く問題ありませんでした」


「そりゃぁ……良かったんだけどよ、いったいどこでそんな恨みを買ったんだ?」


家族にはあまりモンスターの討伐関連以外で心配をかけるような事は伝えていないため、当然二人も何故ティールがそんな目に合ってるのか知らなかった。


「確か、どっかの貴族の令息が気になっている令嬢にアピールするために、グリフォンを討伐しようとしてたらしんですよ。それで俺たちを雇おうとしたらしんですけど、俺たちは俺たちでグロフォンを狩りたかったんで、お断りしたんですよ」


自分たちだけでグリフォンを狩りたいという宣言に対し、二人はティールらしいという理由で、特に追及はしない。


「その後にちょっと色々あって、それらの件に対して不満やイライラをぶつける為に、俺たちの元に暗殺者を送り込んできたって流れですね」


「なるほどなぁ~。まっ、お前が無事ならそれでいっか」


弟子の実力を信用してるからこそ、それ以上深く聞くことはなかった。

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