付与効果よりも……

「父さん達にたくさん土産を買ってきたよ」


まだ時刻は夕食前。

そのタイミングでティールは家族に買ってきた土産を亜空間の中から取り出した。


「はい、二人にはこういうマジックアイテム類」


「「ッ!!??」」


平民の農家出身とはいえ、マジックアイテムという道具が、どういう物なのか解らない二人ではない。


傍で箱の中に入っている指輪などを覗き見するセントの眼は、非常にキラキラと輝いていた。


「てぃ、ティール……い、いったい幾ら、したんだい」


マジックアイテムという言葉に名前負けしそうなほど、装飾が殆どないような物ではなく、きっちりそれなりの装飾が施されている。


素人が見ても、絶対に安くないと……それだけは解る。


「息子からの土産なんだから、そういうのは気にしなくて良いんだってば。装飾はキッチリしてるけど、内容は身体能力を少し強化したり、身に付けることで溜まった疲労を癒したり……そこまで強い効果を持つ者とかではないから、安心して。身に付けてしまえば盗むのは不可能だからね」


実際のところ、防犯機能がそれなりに強力であるため、それ故にそれなりのお値段がする。


「んで、兄さんにはこういうの」


「何をくれ、るん…………い、良いのか、ティール!!!」


「勿論。あっ、親方にも渡す者があるから、後で伝えておいて」


「おうよ!!!!!」


セントへのプレゼントは、一つの疲労回復系の効果が付与された指輪が一つ、後は防犯機能付きの鍛冶道具。


それらの鍛冶道具に主に黒曜鉄などがメインに使われており、道具の質としてはケツの殻が取れた若造には十分過ぎる一品。


そして家族にプレゼントを渡し終えた後、ティールは村長の元へ挨拶に向かい、元々あんまり世話にはなっていなかったが……今後とも家族をよろしくお願いしますという意味を込めて、幾つか日持ちする上等な酒を渡した。


「どうせなら、今日の番は皆で食事しませんか? 食料は大量にあるんで」


「ほほぅ……それなら、お言葉に甘えさせてもらおうか」


まだ夕食作りを始めていない主婦や、まだ結婚していない女性たちに声をかけ、ティールが新鮮なモンスターの肉や野菜、果実などを提供。


彼女たちは張り切って調理を始めた。


「よぅ、ティール。久しぶりじゃねぇか」


「久しぶりね、ティール」


「ジンさん、リースさん、久しぶりです」


教え子の元にやって来た二人は、直ぐに弟子の隣に立つ人物が誰なのかを察し、同じくティールのパーティーメンバーも目の前の二人が誰なのかを察した。


「マスターの仲間のラストだ」


短く、簡潔に自己紹介を行う。


二人はやっぱり……という表情を浮かべながらも、ジンだけは笑いを堪えようとしていた。

しかし、結局耐え切れずに爆笑。


「だっはっは!!! てぃ、ティール……お前、マスターって、呼ばれてんのかよ! だっはっはっは!!!」


「ジンさん、笑い過ぎたって。ラストと出会った経緯が経緯だったから、仕方ないんだよ」


「へぇ~~~~、面白そうね。ご飯が出来上がるまでの間に、色々と聞かせてちょうだい」


ティールの師ということもあり、二人は両親であるルートやリア、兄のセントから近況は聞いていたが、やはり本人の口から聞きたい。


「良いですよ。それじゃあ……やっぱり、まずはソルートでの話ですよね」


最初に訪れた……冒険者としてスタートを切った街、ソルートでの出来事について語り始める。


とはいえ、当然の様に夕食が出来上がるまでに話終われるわけがなく、結局は広場で大勢の村人がいるまで冒険譚を話すことになった。


村人の中にはティールの話に対し、半信半疑に思う者もいたが、途中からはラストがその冒険譚に加わったことで、一気に話に対して説得力が加わった。



村人全員で豪勢な夕食を食べ終えた後、色々話を深く理解出来る四人だけでの二次会が始まった。

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