お前らは関係無い
「ドラゴンの涙です。鑑定お願いします」
「……え」
目の前の少年が、何を言ったのか解らない。
そんな表情を浮かべる受付嬢だが……まだ一年目のペーペーではなく、ケツの殻は取れている一応プロ。
何を言ってるのか解らずとも、受付嬢としての本能が自然に……無意識にビンの中に入った液体に鑑定を使用。
「ッ!!!??? ッい、た~~~~い!!!」
受付嬢は目に飛び込んで来た文字の内容に驚き、椅子からひっくり返り、後頭部を床にぶつけた。
「あの……大丈夫ですか?」
「も、申し訳ありません。失礼しました!! それで、えっと……失礼します」
断りを入れ、再度頑丈なビンに入った液体に鑑定を使用。
(う、嘘……じゃ、ない。本当に、ドラゴンの……涙)
因みに、ドラゴンの涙は採集時とはビンの便に入れ替えてある。
確かに難病に苦しむ貴族令嬢を救うためにはドラゴンの涙が必要ではあるが、レグレザイアから貰ったほどの量は必要ない。
「た、確かに……ドラゴンの涙、ですね。しょ、少々お待ちください」
受付嬢が目の前に置かれているビンの中の液体が、間違いなくドラゴンの涙だだと証言したことで、ギルド内は喧騒に包まれた。
「おいおい、マジかよ……あんな子供と青年が岩窟竜を倒したってのかよ」
「いや、でもあの二人って確か一人でもBランクのモンスターを倒せるだけの力を持ってるらしいぜ」
「そういえばそんな話を聞いたことがあるわね。けど……AランクのモンスターはBランクモンスターとは、また桁外れの実力を持ってるって聞くけど」
「実力は二つ三つ……四つぐらい上だろうけど、桁外れは言い過ぎなんじゃないか?」
「なら、お前はあの二人が本当にAランクモンスターを倒したって言うのかよ」
「そうは言ってないだろ。一人でBランクモンスターを倒せる実力がある二人が挑めば、絶対にあり得ないと言えなくもない気がするけどな」
冒険者たちはティールとラストに向かって相変わらず好き放題に言うが、それでも今回の一件で……完全に二人が冒険者として、見た目通りの者たちではない。
場合によっては色々と頭がおかしい二人だと認識された。
「こちらが、報酬の黒曜金貨五枚になります」
「ありがとうございます」
ティールはささっと莫大な報酬額である五枚の黒曜金貨を懐にしまい込む。
「よっし! 二人で美味いもの食べに行くか!!!」
「あぁ、そうだな」
ここでティールは周囲に牽制を行った。
確かに大金は手に入ったが……周囲で好き勝手自分たちについて話すお前らなんかに、飯を奢る金は一切ない。
ティールは間違いなくそう言い切った。
誰かに自慢して語るほど苦労はしてない。
ただ……ただ戦って倒して欲しい物を手に入れるという、冒険者らしい発想とは別の内容を考え、それを実行。
結果として己の最大級の攻撃を岩壁に叩きこむという行為は行ったが、そこまで大きな苦労ではない。
苦労はしていないが……だからといって、自分たちの知人でもなければ好意とは逆に敵意に近い感情を持ってる者たちに対して飯を奢ろうなどと……そんなご機嫌取りをする気持ちなど、湧く訳がない。
発した言葉通り、ティールはラストと二人でウリプールの中でトップファイブに入る料理店で料理を食べに食べた。
普段はあまり飲まないワインも少々嗜み、超ご機嫌な状態で宿へ帰還。
二人が黒曜金貨五枚という大金を手に入れたという話はあっという間に広まったが、同時に二人が岩窟竜を倒した!!!??? という話も広まり、夜道とはいえ二人の背後を狙おうとするおバカは……一先ずその日は現れなかった。
そしてウリプールにやって来た目的が終わり、二人が次の目的地を何処にしようかと情報を集めていると……ウリプールを収める領主、アルクル・トリンス伯爵に使える従者の一人が、ティールの元に訪れた。
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