バカな真似は、するなよ
「~~~~~~~~~~~ッ!!!!! クソがッ!!!!!!!」
ティールとラストがその場から走り去った後、一人の男が叫んだ。
握り拳を無造作に岩へ振るい、叩き割る。
まだまだ暴れたりない。
血気盛んな者たちは今すぐにでも暴れたかった。
自分たちよりも圧倒的な少年と青年が何かしらの条件をクリアし、ドラゴンの涙を手に入れた。
上の方から強大な気配が消えていないことから、二人が岩窟竜を倒して……殺していないことは明らか。
ただ、二人が何かしらの方法でドラゴンの涙を手に入れたのは、紛れもない事実だった。
「なんで、あんなガキ共が……俺たちよりも先に、あり得ねぇだろ!!!!」
大声で叫び散らす大柄な男。
しかし、先程ティールと絶対に後ろから刺さないと約束した優男が、納得がいかない者たちに声をかける。
「あり得ない、という常識をあの二人は打ち破ったんだ。確かに二人は岩窟竜を殺していない。しかし、何かしらの条件をクリアしてドラゴンの涙を手に入れた事実は変わらない……それは認めなければ分からない」
「んなの、簡単に認められる訳ねぇだろうが!!!!」
「吠えるのは良いけど、君は上で感じたあの爆発音……おそらく、何かを破壊したであろう攻撃音が聞こえなかったのかい」
「「「「ッ」」」」
優男の言葉に、何人かの冒険者が肩を震わせる。
彼らは二人が入り口に戻ってくるよりも前に、二人がどれほどの実力を有しているのか……その片鱗を感じ取っていた。
「それに、彼らが放った戦意や殺気は紛れもなく僕たちと同等の質……いや、もしかしたら僕たちより上かもしれない」
「……あのガキ二人が、絶対に俺たちより上だって、認めろって言うのかよ」
まだ、事実を冷静に伝えられても納得出来ない者たちはいる。
それこそ冒険者だと称えるべきかもしれないが、優男が口にした言葉は……認めたくなくとも、認めなければならない事実。
「なら、君に問う。君なら……あの二人に、特に少年とのタイマン勝負に勝てるかい」
「ッ……」
先程まで威勢よく吠えていた男は言葉を詰まらせる。
「解ってるじゃないか。正直……僕はあの少年は、異常だと思ってる。たった二人という人数ながら、僕達を相手にすると言い切った。十分戦える……殺せる力があると宣言した」
「……はぁ~~~。嫌だけど、認めるしかないわよね。どこからあんな化け物が生まれたのか知らないけど、あの子供からは……それを実行出来るだけの、薄気味悪い何かを感じたわ」
優男の言葉に、彼と同じく強者であるパーティーメンバーの女性が、自分の素直な感想を零す。
「そういう事だ。それとも、自分のプライドを守るために、実力を証明するためにあの二人へ決闘を挑むかい? まぁ、僕は止めないよ。それは君たちの好きにすれば良い……ただ、向こうはそれ相応の対価がなければ受けないだろう」
ティールとラストは強者との戦闘を歓迎する。
ただ……モンスターの様に倒せば何かを得られる相手でなければ、難色を示してもおかしくない。
「一度敵対したんだ。それ相応の対価を用意しなければ受けてもらえないだろう。それと、決闘であれば不慮の事故が起きてもおかしくない。それはこっちのセリフだと言いたげな表情をしてるが、あれだけの殺気を放てる逸材が……大人の殺気や小細工程度に怖気づくと思うかい」
同じ強者の立場である優男の言葉だからこそ、血気盛んな連中がその場で拳を振り上げ……振り下ろすことはなかった。
「殺られるのは、おそらくこちらだ。だからこそ、下手に関わらない方が良いだろう。僕も含めてね……後、言わなくても解ってると思うけど、裏の連中を使って、なんて考えないことだ」
ただの優男とは思えない、まさしく強者としての圧を……バカな事を考えそうな連中に向かって放った。
「もし、そんな事をして僕達にまで迷惑をかけるなら、君たちに牙を向けるのはあの二人だけじゃない……それをよく覚えておくんだね」
一応の忠告を行い。
優男を含む一つのパーティーはウリープルへ戻り、また一つ……また一つと高ランクのパーティーが戻っていった。
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