やはり根っこは
「また誰かが死んだみたいだな」
「岩窟竜に挑もうとしている連中の実力が少々上がっている。向こうも若干余裕がなくなってきたのかもしれないな」
黒曜金貨五枚という大金に釣られ、ますますウリープルにやって来る冒険者の質が向上。
岩窟竜は毎日毎日挑みに来る冒険者たちを鬱陶しい……とは思っておらず、ドラゴンとしての闘争心が良い感じに刺激されていた。
「それにしても、だ……もう十数組ぐらいのパーティーが挑んでるよな」
濃い味付けがされた肉を口に放り込みながら、挑んだパーティーの数を思い出す。
中には一目見て、ティールが素直に強いと感じたパーティーも中にはいたが……その者たちも、返り討ちにされていた。
「今のところ冒険者の数は日に日に増えてはいるが、後十数日も経てば……諦めて別の街に移る者たちが増えるだろう」
「何度挑んだからといって勝てるような相手じゃないしな。諦めたところで、相手が相手だから挑んだ人たちの株が下がることもない」
「死ぬ可能性はあるが、挑む価値があり……素直に諦められる相手でもあるな」
エールを飲み干し、おかわりを頼む。
挑んで敗れた人たちのことを話しながら夕食を食べる二人だが、決して強敵と戦っていなかった訳ではない。
先日、運悪く……二人にとっては運良く、全身ミスリルのミスリルゴーレムと遭遇。
非情に防御力、魔法耐性が高いこともあり、二人はそこそこ苦労して討伐に成功。
「というか、難病にかかった令嬢はまだ生きてるのか?」
「依頼が取り下げられてないということは、まだ生きてはいるのだろう」
ウリープル一の錬金術師が限られた素材で薬を作り、なんとか命を繋ぎ続けている状態。
その繋ぎとめている薬も、素材がなくなれば創造者ではない錬金術師には造れない。
「……とりあえず、もう一回行ってみるか」
「おっ、挑戦するのか」
「ん~~~……明日の気分次第だな」
一先ず翌日の予定が決定。
そして翌日の朝、二人は予定通り岩窟竜の元へ向かう。
以前と同じく、ティールとラストに奇異の視線を向ける同業者たちがチラホラといるが、下手に絡んで二人を追い出そうとするアホ丸出しな命知らずはいなかった。
(今日もドッカンドッカンやってるな~)
鉱山内での探索や、討伐依頼の為に森の中で活動している最中、何度も何度も爆発音などを耳にしていた。
ラストはともかく、ティールは結界がなければ野営の睡眠時、ブチ切れていてもおかしくなかった。
「よっしゃ、いくか」
数時間後、ようやく二人の番が回ってきた。
後方に並んでいる挑戦者たちの中には二人が前回、岩窟竜に挑むまずに戻ってきたことを知っている。
どうせ今回も……という思いが胸の中にある。
しかし、その気持ちを解放して「挑まねぇなら帰れよ!!!!」という言葉は出てこない。
そういった感情を向けて、濃密な殺気を返されたのを忘れるほど、彼らは鳥頭ではなかった。
「おぉ~~~、ようやく来たか」
「どうも……えっと、とりあえず飯にしませんか」
「はっはっは! 勿論大歓迎じゃ!!」
二人の眼が以前とは違う。
それを察していながらも、ティールからの提案を断ることなく受け入れた。
「最近は挑む冒険者が増えたと思いますけど……どうですか?」
「ふっふっふ。ドラゴンという種として、強者との戦闘は拒まん。寧ろ好物である」
ティールの抽象的な質問に対し、レグレザイアは迷うことなく戦闘は好物だと答え、ドラゴンとしての威厳を見せる。
「以前と比べて挑んでくる者の質も上がっており、幾分準備が充実している気もする。ドラゴンとしては、思わずニヤけてしまうな」
「好戦的ではないドラゴンはいないんですね」
「そうじゃな……知り合いに、珍しく戦闘を好まない者がいる。とある時までは同種から臆病者と呼ばれていたが、とある一戦でその評価を完全に覆した。普段は争いを好まずとは、やはり奴も根っこはドラゴンなのど思えた一戦だったな……」
気分が良くなり、いくつかの昔話を終え……皿と酒瓶が空になった頃、ようやく本題へと突入。
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