攫った時点でアウト
「ふざけんなよてめぇええええええええっ!!!!!」
圧倒的に的外れな言葉を吐かれ、ティールは珍しく激昂。
自身の強化系スキルを全て使用し、二振りの愛剣を抜刀して更に強化。
更に突進のスキルを使用しながらダッシュで超加速。
「俺のこと何も知らねぇくせに、ふざけたこと口にすんな」
「……はっ!?」
目の前から個人的にウザ過ぎる人間が消えたかと思うと、自身の視界が真逆になり、何をされたのか気付くまで数秒かかったエンソルオーガ。
突進まで加速に使用したため、ティールの動きはBランクのオーガであっても、よほど集中してない限りは反応出来ない。
「ったく……なんか、お前に色々と事情をありそうだが、人を攫ってる時点でもうアウトなんだよ。俺らがここに来なくてもBランク……もしくはAランクの冒険者たちが来て、殺されてた可能性は十分にある」
「っざ、け……僕、は、ぁ……」
一般的なオーガと違う変異種のエンソルオーガであっても、首を切られてしまえば碌に喋ることも出来ず、徐々に意識が薄れていく。
(僕は……まだ、死にたくない!!!!)
深い深い、永遠の眠りに落ちそうになった瞬間、元人間の感情が爆発。
再びある意味奇跡が……起きなかった。
「……何か良く解らないけど、直ぐに脳と心臓を潰して正解だったみたいだな」
エンソルオーガの特異性を知った時よりも強烈な寒感を感じたティールは、反射的に脳と心臓に刺突を放って潰した。
「マスター、お疲れ」
「おう。急に任せて悪かったな」
「珍しい体験が出来たから、俺としては悪くなかった」
ラストを囲んだオーガたちは、これまた人間くさいコンビネーションでラストを倒そうとした。
オーガのサイズで連携度の高いコンビネーションが繰り出されると、並みのCランク冒険者たちでは圧倒されるのは確実であり、Bランク冒険者たちでも対応を間違えれば危ない。
「そっか。こっちは何と言うか…………凄く、こう……ウザくて面倒な奴だった」
「チラッと声は聞こえていたが、人間くさいを越えてもはや人間ではなかった?」
「やっぱりそう思うよな。ってなると、人間の魂がオーガに宿った……って考えるのが妥当だよな」
話ながら死体の回収を終えた二人。
直ぐに生命反応を感じる方へ向かう。
「どうやら、一応無事? ではあるみたいだな」
とある一室にティールたちが現れると、捉えられていた女性たちは歓喜の表情を浮かべ、涙を流す者もいた。
(……なんか、あんまり予想してた感じのことにはなってない?)
女性たちの表情に疲れは見える。
ただ……あまり表情には絶望の色がなかった。
「あの、少しいいですか」
「はい、なんでしょうか」
囚われていたであろう女性騎士を選び、ティールは言葉を選んで疑問を口にした。
「その……あのオーガ、エンソルオーガはあなたたちに、そういう事は求めなかったんですか?
「そういう……あぁ、なるほど。そうですね、私も驚きましたが、そういう事は求めてきませんでした。何と言いう増すか……恋人から妻? という手順を踏むことを大切にしていたと言いますか……そういう気がなかったとは言えませんが、手を出された方はいなかったようです」
「それは大変喜ばしいことですね」
全くもって意味不明であり、エンソルオーガが何をしたかったのか……全力で殺してしまったので、目的を知る者はこの世にいない。
(本当に何が目的だったんだ? 女性を攫うってことは、そういう事が目的だったんじゃないのか? 夢を邪魔するなとか言ってたし……ハーレムってやつを楽しむのが目的なんじゃないのか? 恋人や妻って…………駄目だ、どれだけ考えても全くそれらしい考えに辿り着かない)
ティールはエンソルオーガの目的内容について考えることを放棄し、囚われていた女性たちと一緒にデブリフーリルへと向かった。
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