見当違いな発言

自身の体がモンスターなのだと理解し、嫌でも納得するまでに数日を要した。


体も、力も完全に人間ではなくなっている。

青年は当然、絶望した。


亡くなった筈の命が、何かの手違いで新たな生を手に入れることが出来た。

だからといって喜べるわけがなく、絶望に打ち紙がれる日々……しかし、これまた不幸なことに、その感情がモンスター色に染まることはなかった。


やり方こそ盗賊やモンスターではあるが、女性とそういう関係を持ちたいという思いが強く残っており……無理矢理であれば、それを実行出来る力が今の青年にはあった。


そこから次第に欲望を爆発させていきながらも、元人間であるため、目的を果たすために長い間絶えることが出来た。


そして今現在、意のままに従わせることが出来る配下を手に入れ、無理矢理手に入れたハーレムを手にした。

青年の欲望は止まらず、これからまだまだ勢力とハーレムを増やすつもりだったが……厄介者がアジトに現れた。


一人の子供は……憎たらしい思いが爆発するほど整った容姿は持っていない。

そこまでの容姿ではないが、それでもオーガとなってしまった青年からすれば、悪過ぎない顔を持つ人間の男というだけで、少々嫉妬心が湧いてしまう。


そして……その隣にいる竜人族の青年に対しては、嫉妬心が色々限界突破してしまいそうな爆発を起こす程の容姿を持っていた。


といった訳で、ティールとラストはオーガとなった元人間の青年からして、自分を殺しに来た云々関係無しに殺したい人間。

そんな人間を相手に容赦するわけがなく、いきなりフルスロットルで闇の魔力を全開。

当然のように詠唱をせずに攻撃魔法を展開し、オーガたちはエンソルオーガの動きに上手く対応し、物理攻撃で二人を攻める。


(うわぁ~~、こりゃ手練れの騎士でも対応に困る弾幕だな)


性格云々はさておき、魔法の腕は速攻で優秀だと認めるティール。


あっさりと風魔法で対応するが、相殺で起こった爆発で地面がかなり揺れる。


(っ!!!??? 今の連続攻撃をあんなにあっさり防ぐのか!?)


配下のオーガにギリギリ当たらないことを想定して放った攻撃魔法が、全て相殺された。

結果、大事な大事なアジトが大きく揺れる。


(この子供! もしや子供の姿をしている熟練の騎士か!!??)


元人間のオーガがそう思ってしまうのも無理はないが、実際のところは特殊なギフトを得た子供。

とはいえ、エンソルオーガにとって非常に危険な敵であることに変わりはない。


そこで……確かに効果的な方法であり、尚且つ悪党らしい考えが頭に浮かび、即実行。


(判断速過ぎるだろ!!)


ただ、敵に背中を向けてダッシュする時点で、何を考えている敵にもろバレだった。


「ラスト! そいつらの相手頼んだ!!!!」


「あぁ、任せろ!!」


配下である武器を持ったオーガたちがそれを許すわけがないのだが、いくら人間らしい動きをしたところで、本気になったティールからすれば……壁にすらならない。


「おい、仮にもオーガだろ。もう少し真正面から頑張れよ」


「うっ、煩い!!! 好きでオーガになったんじゃない!!!!」


(……元人間、で決定だな)


エンソルオーガの発言から、目の前のオーガが亜種という枠では括れない特殊なオーガだと再確認。


「お前みたいな……お前みたいな冒険者は、どうせヤリ〇ンなんだろ!!!」


「はっ!?」


「色んな女と付き合えてヤれるくせに、わざわざ僕の夢の邪魔をしにくるなよ!!!!!!」


「…………はっ!!??」


エンソルオーガの的外れ過ぎる言葉に、ティールはしっかり二回驚いた。


ジンの異性に対する感情などをそれなりに知るジンが今の言葉を聞けば、腹を抱えて爆笑することは間違いなく……少しでもティールと付き合いがある者であっても、的外れ過ぎて笑いをこらえるのは不可能。


(……殺す!!!)


元から殺すつもりではあったが、身に覚えがなさ過ぎる暴言を吐かれ、ティールの方も感情が爆発した。

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