たとえやらかしても!
今の今まで切り札を残していた? そういう訳ではない。
既に有能な手札である雲雷や隠動も使用している。
結果的にダメージは与えているが、それ以上の圧力が返ってくる。
そんな中……今回の乱戦中に成長していた者がある。
それは、倒したモンスターから奪ったスキル。
奪ったスキルの中には、当然強化系のスキルもあるため、現在ティールの強化系スキルは、他の同業者が見れば……「ふざけんなよ!!」と言いたくなる程成長していた。
そんな強化系スキルを、現在ティールは抑えて使用していた。
理由は単純であり、いきなり強化の幅が上がった強化系スキルを全力で使用すれば、その強化に振り回されることになる。
最悪の場合、ブレーキが効く前に木に激突し、その隙を狙われて骨をバキバキに折られる可能性がある。
慣れるまではデメリットがある強化となるが……アドバースコングを仕留めるには、抑えていては勝てないと判断。
「……いくぞ」
「っ!!!」
身体強化、脚力強化は抑えずに全力で発動。
次の瞬間、アドバースコングの視界から好敵手であるティールの姿が消えた。
完全に、目では追えない速度で消えた……それでも、五感がその動きを捉えていた。
体は僅かに反応したが……気付いたときには、右腕がなくなっていた。
「っ!!!??? ゴァアアアアアアッ!!!!!」
アドレナリンがドバドバ状態とはいえ、さすがに腕を切断されては、痛みが体に襲い掛かる。
それでも無理矢理筋肉を動かし、止血を完了。
敵が消えた方向へと体を動かす。
すると……後ろにいるであろう敵は、思いっきり木に激突していた。
「ッ!!!!???」
この乱戦中に強化された身体強化を使用していたため、木に激突したティールが……木に負けることはなかった。
激突された木はボキリと折れ、そのまま倒れる。
打ち勝ちはしたが、それでもそれ相応の痛みがティールの頭を襲う。
(~~~~~~~~~ッ!!?? い、いてぇ~~~~~~!!!!!!)
こうなるかもしれないと予想はしていた。
予想していたが……実際にやってしまうと、本当に痛い。
「ゴルルゥゥゥゥアアアアアアアアッ!!!!」
そんな絶好のチャンスを……美味しい背中を晒している敵を見逃す程、アドバースコングは甘くない。
先程食らった疾風瞬閃による斬撃は、ティールの身体能力が大幅に強化されたスピードも相まって、アドバースコングが食らったどの攻撃よりも鋭かった。
その結果、これから放たれる一撃は今まで以上の鋭さを有した隕石。
(そう、くるよな!!!!)
予想していた最悪の結果通り、自身の身体能力に振り回され、木に激突するという、ダサ過ぎる状態になった。
アドバースコングがライオネルの様に、自身の戦闘欲を満たすために戦う様な考えを持っていないことは解っている。
なので、気配感知で常にアドバースコングの動きは把握。
木に激突した痛みを堪えながらも、ジャストタイミングで雷雲を発動。
「ッ!! ゴ、ァ」
腕の切断面という、大きな傷口もあって、前回のようにあっさりと雷による痺れを弾き飛ばせない。
(いっ、けぇぇええええええッ!!!!!!)
背後に回り、なんとか暴れ回る運動能力を制御し、アドバースコングの首の渾身の斬撃を叩きこんだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ちょっと、強過ぎたか?」
渾身の斬撃は、見事に太い首の切断に成功。
ただ……そこで斬撃の勢いはとどまらず、数本の木々を切断してしまった。
「でも、勝てた……よな?」
切断された頭は地面に落ち……いきなり切断面から頭が再生されることもない。
自身の勝利を確信したティールは、拳を強く握りしめ……天高く上げた。
「アドバースコングは、倒し終えた!!!!!」
あらん限りの声でトップの討伐を同業者たちに伝える。
その報告を聞いた冒険者たちはホッと息をつくと同時に、ラストスパートへの活力が漲ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます