好印象な解体士

「これは……中々の数だな」


街に着いてから直ぐに冒険者ギルドに向かい、イグラスたちはいったいどの様な内容だったのかを職員に報告。


そしてティールは冒険者ギルドに所属している解体士たちが解体を行う倉庫に向かい、今回の討伐で倒したモンスターを全て亜空間から出した。


「これで全部です」


「コボルトにオークは分かるが……なんでリザードマンまで大量に死体があるんだ? 確かお前さんたちはコボルトとオークの巣を潰しに行ったんだろ。てか、こいつはリザードマンジェネラルとスカーレットリザードマンじゃねぇか」


解体士たちはまだギルドに報告された内容を知らなかったので、ティールたちがリザードマンの群れとも戦っていたことを知らなかった。


「コボルトとオークの巣を潰した後に、こいつらが襲ってきたんですよ。多分、俺たちが疲弊するのを狙ってたんだと思います」


「なるほどなぁ。人型のモンスターはレベルが高くなれば、ランクが高いほど頭が良いが……とんだ災難だったな」


解体士たちはティールたちがリザードマンの襲撃から生き抜いたことにも驚いたが、全員ティールの空間収納の容量に驚かされていた。


(この坊主……いったいどんな容量してんだ? 並の容量じゃねぇぞ……いや、あんまり詮索するのは良くねぇな)


いったいどんな経緯で空間収納のスキルを手に入れ、成長させたのか。

そんな事を尋ねることなく、解体士たちは一斉にコボルトにオーク、リザードマンの解体を始めた。


「ちなみにどいつを誰が倒したっていう決定事項はあるのか?」


「リザードマンに関してはイグラスさんたちが全部自分たちにくれると言ってくれました」


「「「「「「……なに!!!???」」」」」」


解体作業を始めた解体士たちが一斉に手を止めてティールの方を振り返った。


「……つまり、あれか。お前さんたちがリザードマンジェネラルとスカーレットリザードマンを倒したってことか」


「自分はスカーレットリザードマンを相手しました」


「俺はそっちのリザードマンジェネラルを相手した」


「は、はっはっは!!!! そうかそうか、こいつはめでたい日だな。安心してくれ、二人とも。全部綺麗に解体してやるからな!」


解体士のリーダーは英雄が強敵を倒したと分かり、気分が高揚。

普段から持ち運ばれた死体は綺麗に解体しているが、いつも以上に上手く……そして丁寧に解体しようという気持ちが大きくなった。


そして直ぐには解体が終わらないので、二人はイグラスたちが待つフロアへ戻る。


「良い者たちだったな」


ラストとしてはマスターであるティールがスカーレットリザードマンを倒したとしても訝しげな眼を向けなかった解体士たちに、非常に好感を持てた。


「何人かそれなりに戦えそうな人がいたから……もしかしたら元冒険者の人がいたのかもしれないね」


「なるほど。それならマスターの強さに勘付いてもおかしくないな」


街に戻ってくるまでに一悶着あり、ラストの機嫌は非常に悪かった。


ラストとしては言っても実力差が分からない者には、力で直接差を解らせなければならない。

そう思っており、イギルに関してはラストとティールが一回ずつ蹴り飛ばしている。


それにもかかわらず、不躾にもイギルはティールの胸倉を掴んだ。

これはもう骨を何本か折って自分たちとイギルの実力差を徹底的に解らせるしかない。


それはラストの考えであったが、主人であるティールが止めたことによって結局手を出すことはなかった。


「……マスター、本当に奴らを放っておいても良いのか」


「イギルたちのことか?」


「あぁ、その屑共だ。マスターがいなければあそこでくたばっていたというのに……どうしてあんな態度が取れるのか、俺には理解出来ない」


「あれは俺の言葉選びが悪かったってのもあるよ」


冒険者として活動しているのに、あまりランクの昇格に興味がない。


それを聞けば同じルーキーがあまり良く思わないのも無理はない。

それを今更ながら思い出した。


「でも、そういう俺たちのスタンスを知っても変わらない態度で接してくれる人だっているんだ。だからあんまりピリピリするな」


「………分かった」


本当はあまり納得していないが、それでも形だけ了承。


そしてイグラスたちと合流し、ティールたちは宴会を行う予定の酒場へと向かった。

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