もう連戦はダルい
「てめぇ!! ちょっと強いからって、あんまり調子に乗ってんじゃねぇぞ!!!!」
昇格にあまり興味がない、嬉しくない。
そう宣言したティールに向かってブチ切れた。
Cランクの先輩冒険者たちや、ラスト………そしてティール本人も少しを気を抜いていたため、イギルが近寄ってくる事に反応が遅れた。
そしてブチ切れたイギルは怒りに身を任せ、ティールの胸倉を掴んで持ち上げた。
まだまだこれから成長期のティールだが、現在はまだまだ身長が低い部類。
巨漢のイギルが胸倉を掴んで持ち上げれば、当然ティールは宙に浮いてしまう。
(ちょ、死にかけた戦いが終わった後なんだから、そういうのはせめて後日にしてくれよ)
Dランクに昇格した後に、直ぐCランクに昇格するかもしれないという状況があまり嬉しくない。
そんな内容を口に出してしまってから、ティールはやってしまったなと思った。
だが、その前に止めなければならない人物がいる。
それは……勿論、ラストだ。
「「「「ッ!!??」」」」
ティールがイギルに胸倉を掴まれて浮かんでる状況……普通に考えて止めなければならない人物はイギルだろう。
しかし今……オークやコボルト、リザードマンジェネラルと戦っていた時よりも殺気を出している人物がいる。
そう、ティールの一応奴隷でパーティーメンバーであるラストがCランクの冒険者たちでもビックリするほどの殺気を撒き散らしていた。
この状況、イギルより寧ろラストを止めるべきなのでは?
先輩冒険者たちがつい、そう思ってしまったのも仕方ない。
(本当に死人が出そうだな)
イギルが自分の胸倉を掴んで持ち上げた瞬間にラストが切れてしまうと予想し、直ぐに静止の合図を出した。
「なぁ、あんまり大きな声を出したらモンスターが寄って来るかもしれないだろ。だから今は怒鳴り声を出すなよ」
そう言いながら胸倉を掴んできたイギルの手首を掴み、力を入れる。
「ッ!!!!????」
ポーションを飲んで魔力を回復し、一応戦える状態にはなった。
だが、それでも本音のところ……今日はもうモンスターと戦いたくないというのが本音。
戦おうと思えばリザードマのようなCランクのモンスターと戦えるが、万が一街に帰るまでにリザードマンジェネラルやスカーレットリザードマンのようなBランクモンスターが現れた場合、絶対にラストに前衛を任せて自分は後方支援に徹する自信がある。
「チッ!!」
このままじゃ手首の骨を折られてしまう。
そう思ったイギルは舌打ちをしながらティールの胸倉から手を離した。
「イギル、命懸けの戦いが終わった後なんだ。ムカつくことがあったとしても、今は止めてくれ。それにティールの言う通り、大きな声を出せば耳の良いモンスターはこちらの存在に気付く」
「……すいませんした」
自身の怒鳴り声がモンスターを引き寄せてしまうかもしれない。
それに関しては自身に非があると認め、イギルはイグラスに謝った。
(全く、あれだけ激しい戦いをしていたティールに向かってよく胸倉を掴めるな)
ティールとスカーレットリザードマンの激闘は、同じルーキーであっても現時点では天と地ほどの差の実力差があると解らせるには十分な内容だった。
にも拘わらず、イギルは怒りに身を任せて躊躇なくティールの胸倉を掴んだ。
その度胸に関しては先輩冒険者たちもある意味凄いと思うが、あまりにも無謀……そして蛮勇だと感じてしまう。
「……マスター、潰さなくて良かったんですか」
「ちょ、サラッと怖いこと言うなよ」
横から小声で耳打ちしてきたラストの言葉にギョッとするティール。
ラストとしてはこれでも表現をオブラートに包んだつもりであり、本当は殺さなくて良かったのかと尋ねたかった。
そしてラストは何故イギルがいきなりティールに対して怒りの感情を向けたのか、そんな理由には全く興味がないのでいきなり胸倉を掴んだことに対して謝らなかったイギルに対して特大の不快感を抱いた。
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