直感に従って

ティールは徐々にではあるが、スカーレットリザードを追い詰めていた。

だが、やはり中々決定打を与えられない時間が続いていた。


しかし、ブラッディ―タイガーとの戦闘時と同様に、雲雷の使いどころを間違えなければ倒せると確信していた。


(にしても、本当に……よく動き続けるな、こいつ!!!)


ブラッディ―タイガーと戦った時よりもティールは確かに強くなっていた。

それは事実であり、ブラッディ―タイガー戦の時よりも傷の数は少ない。


しかし、中々スカーレットリザードのスタミナは尽きない。

ティールも強化系の魔力を使ったり、風や雷の斬撃を放っているので、魔力は徐々に減っている。


雲雷を使う魔力を考えれば、そろそろ使わないと魔力が足りなくなる。

魔力回復のポーションは持っているが、この戦闘の中でポーションを飲む余裕は全くない。


だが、遂にティールが望んでいた展開が来た。


(こういう一撃を、待ってたんだ!!)


相手がこの一撃で終わらせる。

そういった思いが乗せられた一撃を待っていた。


スカーレットリザードのロングソードに纏われている炎は燃やすを越えて対象を溶かす程の火力を宿している。

生半可な防御では容易に斬り裂かれてしまう。


火に優位な属性である水の攻撃魔法を放っても、蒸発させられてしまう可能性が高い。


だが、ここでティールは躱す……ではなく、身代わりを生み出すという形で躱すという判断を取った。


しかも雲雷はただの身代わりではなく、雷の魔力によって生まれた分身。

触れれば、電撃に襲われる。


構えてはおらず、不意に訪れる電撃は完全に対策していなければ少しの間、電撃の痺れによって体が動かせなくなる。


その一瞬があれば、スカーレットリザードを狩るのに十分過ぎる。


(ここで絶対決める!!!!)


豹雷に纏う魔力を増幅し、スカーレットリザードの首を斬る。

ティールは雲雷で分身を生み出した瞬間に背後に回っており、完全にここで終わらせられると思っていた。


これ以上はこいつとの戦いに付き合いたくないとすら思っていた。


だが……ここで一つ誤算が生まれた。


スカーレットリザードは渾身の一撃を放つ瞬間、ティールの表情から嫌な予感を感じた。

何を仕掛けてくるかは分からない。


だが、このまま剣を振り下ろしてはならない……直感的にそう思ったスカーレットは地面を蹴って後ろに下がりながら体を左向きに回転させ、振り下ろされた剣を今度は上に振り上げた。


敵が自分の視界から消えた場合、敵はどこから自分の命を狙ってくるのか。

スカーレットにとってその答えは背後だった。


その考えは見事に的中し、炎剣は下からティールの命目掛けて迫る。


「ッ!!??」


雲雷を利用して背後から確実に敵の首を狩る。

そう考え、行動していたティールは敵のまさかの行動に動揺を隠せなかった。


(嘘、だろ!!)


既に豹雷をスカーレットの首を狩る為に振っていた。

このままどちらの刃が先に届くのか……それは物凄く微妙なところ。


だが、仮に豹雷が先にスカーレットの首に届いたとしても、炎剣の一刀の勢いは止まらない。

結局のところ大怪我を負ってしまうのは間違ない。


(股を割かれるのは、嫌だ!!!)


そんなティールの感情が体を動かしたのか……それとも実年齢からは考えられないほど戦闘を乗り越えてきたティールの体が無意識に動いたのか……それは本人も分からない。


だがそれでも、ティールは炎剣が股に触れる前に脚が地面を蹴った。


間一髪…………本当に間一髪、ティールの股は斬り裂かれることはなかった。

本当に幸運と言えるだろう。

今の一歩はまさに奇跡だと、本人も思った。


しかし、スカーレットの首を狩る為に振っていた腕を引っ込めるのは間に合わず、炎剣によって切断された。


「~~~~~~~~ッ!!!!!!!!!」


大声を出して転がりたいほどの激痛に襲われたが、それでも声を押し殺し……ここで終わらせるために無理矢理体を動かす。

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