最後まで笑う
(そういえばあの能力があったな。すっかり忘れていた)
斬馬刀は魔剣に分類される武器なので、一般的な武器には付与されない能力が付与されている。
腕力の強化もその一つだが、もう一つは斬馬刀の重量を操作する能力。
斬馬刀がそのままでも強力な武器ということもあり、ラストはヴァンパイア戦でも特に重力操作の能力を使わずとも勝利できた。
(この戦いではまだ一回も使っていない……であれば、勝負を終わらせる有効打にはなるな)
マスターであるティールの万が一を考え、ラストの動きは更に加速。
先程まで互角だったジェネラルが徐々に押され始める。
「ッ!?」
やや雰囲気が変わったことに驚くが、ただ相手が勝負を終わらせにきた。
それを察したジェネラルは応えるように雄叫びを上げながら激戦に挑む。
ジェネラルが持つ大剣には再生の効果が付与されており、刃が欠けた程度では直ぐに治ってしまう。
他にも耐久力の強化の効果も付与されている。
ジェネラルの腕力や防御力も相まって、中々押し切ることが出来ない。
自身の強さと大剣に付与された効果を完全に理解しているジェネラルだが、ラストはそこを狙おうと決めた。
(これで終わりだ!!!!)
横から振り払われる大剣を弾き、飛び掛かるように斬馬刀を真上から振り下ろす。
その際、斬馬刀には魔力だけではなく竜気が纏われており、更には振り下ろすタイミングで重量は三倍に上げた。
「ブレイクスラッシュ!!!!」
更に剣術スキルの技、ブレイクスラッシュを発動。
破壊の効果が付与された重い一撃。
だが、その反面技を発動した後、両手に反動が返ってくる。
諸刃の技……というのは少し言い過ぎだが、使用後に少々隙が生まれてしまう。
それはラストも承知の上でブレイクスラッシュを放った。
「ギ、ギィィィィアアアアア、アア、ァ……ア?」
両手を使って大剣でブレイクスラッシュを受け止めようとしたジェネラルは斬馬刀が刃に触れた瞬間、今までの一撃とは明らかに違うと……自分の命に届きうる一撃だと解った。
その瞬間、先程までの雄叫びとは違い、死に抗う様な声が出た。
何がなんでもこの一撃は跳ね返す。
そんな思いで声を上げ、大剣を支える体に力を入れた……だが、直ぐに異変に気付いた。
今まで自分が愛用していた大剣が真っ二つに折れていた。
刃が少し欠けた程度であれば、直ぐに修復出来る。
荒い戦い方をするジェネラルにとっては使い勝手の良い大剣だった。
しかし、刃が真っ二つに折れてしまってはそう簡単には直らない。
元には戻るが、それでも万全の状態に戻るまで時間が掛かる。
魔力を注げば一気に修復することも可能だが、ジェネラルもラストとの戦闘中では身体強化や腕力強化のスキルを発動。
体や大剣に魔力を纏っていたこともあり、そこまでの余裕はない。
仮に大剣のは一瞬で直したとしても、ごっそり魔力を持っていかれる。
そうなると、さすがの膨大なスタミナを持つモンスターでも大きな疲労を感じ、鈍くなる。
「強敵だったぞ、ヴァンパイアよりもな」
だが、そんなことは些細な問題だった。
ラストのブレイクスラッシュにより、ジェネラルの体は一刀両断……にはならなかったが、頭から股先まで潰れたように斬馬刀によって斬られた。
その一撃はジェネラルの頭蓋骨を、脳を……胸骨や内臓を見事に破壊。
ジェネラルは数秒の間、自分がどのような状態か分からなかったが、徐々に崩れ行く自身の体と視界を把握。
自分は竜人との戦闘に敗れたのだと解り……それでも尚、ジェネラルは口角を上げながら逝った。
「最後の最後まで笑うか……天晴れ、というべきか。この大剣は貰うぞ」
刃が欠けても直ぐに修復される大剣はラストにとって、とても魅力的な武器だったので直ぐに回収。
そしてマスターであるティールが戦っている方向に目を向ける。
すると……ティールの片腕が宙を飛ぶ光景が目に入った。
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