そこのみを使う
(ここで、絶対に終わらせる!!!!!!)
切断された右腕は当然、痛い。
痛覚を遮断するような芸当が出来ないティールにとって、ここ最近感じていなかった強烈な痛み。
だが、それでも決して意識は途切らせず、左手に持つ疾風瞬閃に力を込める。
体に纏う魔力を集中させ、しかし纏う風は荒ぶることなく鋭い刃の様に収める。
普段のティールであればこれぐらいのことは容易に行えるが、右腕の切断という激痛によって普段の魔力コントロールが失われていた。
それでもこの一刀に全てを懸けるといった心情で体を動かす。
(態勢が悪いのは、向こうも同じだ!!)
ティールに痛烈なダメージを与えたものの、無理矢理体を回転させてロングソードを下から振り上げたスカーレットリザードの態勢も悪い。
そのチャンスを逃さず、今度は左足で地面を蹴って下から疾風瞬閃を振り上げた。
「ッ!!!!」
ここでもスカーレットリザードは驚異的な反応を見せ、体に纏う魔力をティールが斬り込むであろう箇所に集める。
ロングソードではティールの一刀を防ぐのに間に合わない。
攻撃を回避するなどもっと無理な話。
故に、スカーレットの魔力を一か所に集めて攻撃を防ぐという判断はベスト・オブ・ベスト。
体全体に魔力を纏うのではなく、一か所に集中して魔力を纏うことによって格段に防御力は上昇する。
防御面でそういったアクションを起こす場合、集中する箇所を間違えば手痛いダメージを食らう……もしくは、その一撃で勝負が決まってしまうかもしれない。
しかしスカーレットは狙いをズラしてしまうことなく、ティールが斜め下から振り上げる位置に魔力を集めた。
これがティールの渾身の一刀に対してスカーレットリザードが対策できる最善の手段。
それは誰にも否定されない……寧ろ賞賛すらされる判断力とコントロールだった。
だが……それでも、最善な選択肢を行ったとしても絶対に防げるわけではない。
「…………ギギャ」
ティールの風刀はスカーレットの魔力を斬り裂き、そのまま体を……腕を一刀両断した。
高い回復力を持つスカーレットリザードだが、体を綺麗に切断されてはさすがに回復することは出来ず、ズルっと斬られた上半身が地面に零れ落ちた。
(最後まで笑うか……本当に戦いが好きなんだな)
ジェネラルと同じく自身が死んだと解っても笑うスカーレットを見て、ある意味尊敬の念を抱いた。
だがティールは強敵に打ち勝ってホッとする間も無く、スカーレットの炎刀によって切断された右腕を拾って切断面に押し当てる。
「アクアヒール」
斬られた右腕をくっ付かせる為に水の回復魔法を使用。
ただ、それだけでは上手く繋がらないというのは分かっていた。
(今だ!)
そこでティールは絶妙なコントロールで再生のスキルを使った。
切断面から腕を再生させるのではなく、人体から欠損部分を再生させるという回復力の身を使用して腕をくっ付けようとした。
以前に自分の体で何度も行ったりなど、そんな人体実験は行っておらず、ぶっつけ本番。
しかし再生のスキルを使うにしても、あまりにも人目が多過ぎる。
基本的にモンスターが有してるスキル……人が持っている場合もあるが、希少スキルに変わりはない。
そんな手札を多くの者に知られたくないと思った結果、咄嗟に思い付いた回復方法だった。
「……ふぅ~~~、どうやら上手くいったみたいだな」
思い通りに腕と指が動くか確かめ、無事アクアヒールをカモフラージュした再生のスキルによる腕の接続に成功。
「マスター!! 大丈夫か!!!!!」
腕が切断された瞬間をバッチリ見てしまったラストは必死の形相で慌てて駆け付けた。
「おう、大丈夫だよ。心配かけて悪かったな」
「い、いや……雲雷を使った攻撃を見事掻い潜った相手を褒めるしかないだろう。だが、本当に腕は大丈夫なのか」
「あぁ、本当に大丈夫だって」
全く問題無いという証明する為、何度も右手右腕を動かす。
本当に主人の体が無事だと解り、ここでラストの緊張の糸が切れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます