比べるのは失礼
(あの頃より強くなってるから、多少余裕はあるけど……クソッ!!! やっぱり強いな)
現在ティールはBランクのモンスター、スカーレットリザードマンと戦闘中。
戦況はややティールが有利。
しかしまだ戦況がひっくり返る可能性は十分にあり、まだまだ油断出来ない状況が続く。
(それなりに鍛えてるんだけど、モンスターの体力は本当に、底無しだな!!!)
ルーキーやベテランの冒険者と比べても比較的スタミナの量が多い。
それはティールが幼い頃からスタミナを強化するトレーニングを続けてきた成果だ。
ただ、モンスターたちはそんな努力をせずとも人からすれば無尽蔵の様なスタミナを持っている。
ティールも多数のオークやリザードマンと戦う程度であれば、スタミナの心配はしない。
しかし敵は人型のBランクモンスター。
身体能力は互角に近く、ティールは常に全力で動き続けている。
動きをセーブした状態での戦闘であれば余裕だが、全力で動き続ける戦闘。
この状態は徐々にティールを追い詰めていた。
(リザードマンだから魔力量はそんなに多くないと思ってたけど、そこはあんまり期待しない方が良さそうだな)
ティールもスカーレットリザードマンも自身に身体強化のスキルを使用しており、常に魔力を消費し続けている。
魔力量が冒険者全体でみればかなり多い方のティールだが、今のところスカーレットリザードマンの魔力が切れるまで根競べする気にはなれない。
(というか、あんまり森の中で火は使って欲しく、ないんだけどな!!!)
スカーレットリザードマンは常にロングソードの刃に火の魔力を纏って攻撃を行う。
火の斬撃や刺突を放つこともあり、防御……または弾くという行為をとった瞬間に致命傷を食らう可能性があるので、避けるという選択肢を取らざるを得ない状況が続く。
後方ではCランクの冒険者たちがいるので、木に火が移れば直ぐに水魔法を使って鎮火。
後輩たちの方に飛べば、きっちりと相殺して被害が出ないように全力を費やしている。
(こいつらにとっては、森に火がついて大火事になろうとも関係無いんだろうな!!!)
現在ヤドラスで生活しているティールにとって、万が一そんなことになれば一大事になるのは間違いなので、是非とも火による攻撃は遠慮してほしい。
だが、そんなことはスカーレットリザードマンにとって一ミリも興味無いのでガンガン火を使った攻撃を繰り出す。
しかしティールも負けておらず、疾風瞬閃と豹雷をフルに使って攻め続ける。
「シッ!!!!」
「ッ!?」
疾風瞬閃でロングソードの斬撃を逸らし、豹雷で腹を斬り裂く。
(勘の良い奴だな)
豹雷の一撃が飛んでくることを読んでいたスカーレットリザードマンは寸でのところで後ろに跳び、豹雷の刃は腹を掠って出血のみ。
スカーレットリザードマンの贓物を斬り裂くことはかなわなかった。
「お、らっ!!!」
それでもティールは半身になった状態から左足で地面を蹴る。
突進のスキルを同時に発動して更に加速。
後方へと跳んだスカーレットリザードマンの腹に右足で蹴りをぶち込んだ。
「ッ……ギ、ギ、ギ」
「ちっ! 本当に余裕だなこの野郎」
今の蹴りは個人的に良い一撃だと思った。
しかし結果は骨に罅を入れただけで、決して折れてはいない。
(イギルとかが食らえば骨がバキバキに折れて大量吐血コースだと思うんだが……いや、イギルと比べるのはこいつに失礼か)
人間とモンスターなので、そもそも比べるのがおかしい。
しかし身体能力ではスカーレットリザードマンの方が圧倒的に上なのは間違いない。
骨に罅が入れば多少の痛みはあるものだが、ティールとバチバチの戦いを楽しんでいるスカーレットリザードマンの体がそんな小さな痛みにいちいち反応することはなく、戦闘は再び続行。
ティールとは自分のスタミナと戦況を考え、奥の手の使いどころに悩んでいた。
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