離れるのは良くない
「オオオォォオオオオオオオオオッ!!!!!!!」
後ろで委縮してしまっているDランクの冒険者たちでは敵わない。
それを解っているラストは森の中でも響き渡る雄叫びを上げ、敵の注意を自分に引き付ける。
「ふんっ!!!!!」
強化系のスキルを全て使用し、全力でリザードマンたちを葬る。
数体程度であれば余裕をもって倒せるが、目の前の群れは先程まで戦っていたコボルトとオークの群れと比べれば少ないが、それでもそれなりに数が多い。
そして一体一体の強さがコボルトとオークよりも断然上ということもあり、全員生き残るために全力で殺しに行く。
「マスター!! あの斬馬刀を貸してくれ!!!」
「おう!」
数体程リザードマンを斬り裂いて戦闘不能に追いやったが、真っ二つには斬れていない。
効率を考えてブラッディ―タイガーの素材を使用した斬馬刀を使った方が良いと判断し、主人であるティールに貸し出しを要求。
ティールも目の前の集団は本気でやらないと不味いと判断し、即座に亜空間から斬馬刀を取り出してラストに向かって投げる。
放たれた斬馬刀はリザードマンの体を抉りつつラストの元に向かい、危なげなくキャッチして即座に敵を葬る。
(奥にいる二体はコボルトとオークのジェネラルよりも絶対にヤバい!!!)
奥で立っている二体と戦うために、なるべく体力を消費せずにリザードマンたちを倒す。
そう決めたティールは速さを上げる為に疾風瞬閃と豹雷を取り出し、リザードマンやその上位種の急所を斬り裂くことに集中。
Cランクの冒険者たちはティールとラストと一緒にリザードマンを倒すメンバーと、救出した女性と後輩たちを守る為のメンバーに別れた行動開始。
「お、俺たちも戦えます!!!」
「そ、そうですよ! 私たちだって冒険者です! た、戦いで死ぬ覚悟ぐらい、出来てます!!!」
こんな状況で守られるわけにはいかない。
自分たちも戦いに参加したい。
足手まといなまま終わりたくない。
そんな後輩たちの気持ちは痛いほど解かる。
だが、先輩として後輩たちが絶対に死ぬと分かる場所に送り出すわけにはいかない。
「熱くなるな。冷静になるんだ……俺たちの後ろには、誰がいる」
そう……この場には戦えない者が、オークに囚われていた女性たちがいる。
彼女たちに「この場から全力で離れろ!!!」と伝えて街に向かわせる?
悪手も良いところだろう。
彼女たちが街に着くまで、他のモンスターに襲われる可能性は十分にある。
それならば、Dランクの冒険者に護衛を任せて街を向かわせるのがベスト?
確かに救出した女性たちだけを街に向かわせるよりは良い判断かもしれない。
だが、ラストが必死に自分たちだけに注意を向けたとはいえ、一番狩りやすい存在を見逃すのか?
それらの可能性が絶対にあり得ないと否定出来ない限り、目と手が届く場所に置いておくのが一番ベストな判断。
これはCランク冒険者、全員の判断だった。
「それに……お前たちがあの乱戦に入ったところで、足手まといになるだけだ。それが分からないお前らじゃないだろ」
「「「「ッ!!!!」」」」
解っていた。そんなことは解っているが、先輩直々に言われると悔しい思いが溢れ出す。
自分たちが言わなければ、こいつらは突っ走って無駄死にしてしまう。
乱戦から零れてこちらに向かって来るリザードマンを弓で冷静に仕留めながら、先輩冒険者は言葉を続ける。
「言っておくが、ラストとティールが参加しているなら、自分たちもという気持ちは捨てろ。今回の戦いの中で少しでも二人の戦いぶりを見ているなら解るだろ。実力も装備の質もお前たちより遥かに上だ」
現在ラストが使っている斬馬刀と、ティールが扱う剣と刀に関してはCランク冒険者たちが羨むほど高い質を持っている。
(全く、ルーキーがいったいどこであんな武器を手に入れたのか……この戦いが終わったら、是非とも聞かせてほしいものだな)
決してフラグではない言葉を呟きながら、男は冷静沈着な心を崩さず矢を放ち、今度は膝を貫いてリザードマンの機動力を奪った。
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