返答ミス
前方から二人組の冒険者が近づいてくる。
ラストは若干気にしつつも、ティールは全く前方の冒険者たちを気にすることなく通り過ぎようとする。
だが、そのうちの一人がティールたちに声を掛けた。
「おい、坊主ども。もしかしてたった二人で遺跡を探索しようとしてるのか?」
「えぇ、そうですけど……それがどうかしましたか?」
ティールは声を掛けてきた冒険者に、淡々と返す。
だが、声を掛けたはその態度やや気に入らなかった。
「おい、お前らランクいくつだ」
「……ランクは一応個人情報なので、そう簡単に教えるものではないと、ギルドから教わったと思いますけど」
なんと、ここでティールの知性が上手く働かなかった。
確かにティールの言葉は決して間違っていない。
個人のランクやスキル、レベルは大切な個人情報。
同業者相手でも、おいそれと話して良い内容ではない。
冒険者登録を行う際に教えられる内容なのだが、実際のところ……その教えを忠実に守っている冒険者は多くない。
なので、この質問が男性冒険者の神経を逆撫でることになる。
ただ、男のパーティーメンバーである他三人は、仲間がルーキーに嘗められていると思い、思わず吹き出して笑ってしまう。
「てめぇ……まだルーキーだろ。あんまり調子乗ってんじゃねぇぞ」
「確かにまだ俺もラストもルーキーですけど、それなりに戦えますよ。なぁ、ラスト」
ティールから目で合図を受け取ったラストは一歩前に出て、戦意を開放する。
すると絡んできた男を含め、四人の顔色が変わった。
「ラストは超強いですし、俺もそれなりに戦えるんで、二人で遺跡を探索しても問題無いですよ。なっ」
「……そうだな。今のところ特に問題はない」
二人の様子を見ていた狼の獣人が男の肩に手を置き、これ以上は無駄だと伝える。
「この二人はそれなりに戦えるルーキーらしい。放っておこう」
「……チッ、分かったよ!」
「二人とも、確かに君たちがそこら辺のルーキーよりも強いのは解かった。ただ、遺跡内は森の中よりも厄介な場所だ。注意して進むと良い」
「えぇ、分かりました。ありがとうございます」
闘争が起こることはなく、両パーティーはそのまま違う道に進んだ。
「……俺に声を掛けてきた冒険者は結構態度悪かったけど、狼の獣人はなんか……以外にも態度が柔らかかったな」
「獣人全員が、気性が荒いという訳ではないからな」
「それもそうだな……なぁ、ラスト。俺の受け答えどうだった?」
「……嘘偽りなく言わせてもらうと、少し不味かったと思う」
「そ、そうか。まぁ、結果的に声を掛けてきた人を怒らせたっぽいからな」
ティール的にはこれで良いだろうと思って出した返答だが、見事に男の態度を悪化させてしまった。
「あぁいった視る眼がない連中は、正論を言われると逆にキレる。そう教わった」
「……めんどくさいな。敬語使って答えたんだから、それぐらい目を瞑ってくれても良いと思うんだけど」
「人によっては、その敬語が嘗めてると感じてしまうのだろう」
「人の感情って、本当に良く解からないな」
ティールとしてはなるべく穏便に済まそうと思っていたつもりだが、結果的に相手を怒らせてしまった。
(もしかして、性格的にわざと姿勢を低くするのが向いていないのか?)
人には向き不向きがあるので、ティールがその可能性に当てはまる場合もある。
「ちなみにさ、俺たちとあの人たちが戦ってたらどうなってたと思う?」
「間違いなく俺たちが勝っていたな。おそらくCランクの冒険者だと思うが、跳び抜けた強さは感じなかった。装備している武器もティールさんが持つ武器と比べれば格下なのは間違いない」
先程の四人組は決して弱くはないが、ザ・Cランク冒険者といった実力しか持っていない。
身に着けている装備もCランク冒険者に相応しい物のみ。
色々と訳あり故に、高い戦力と武器を身に付けたティールとラストが本気を出せば、殺すのに一分も掛からない。
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