師匠と似た雰囲気を持っていた
「クソ、あの生意気なガキどもめ……ルーキーが調子に乗りやがって」
「ねぇ、いつまでそんなこと言ってんの? もう過ぎたことでしょ」
「うっせっ!!! 俺がせっかく親切で言ってやったのにあいつら……」
「全く親切に言ってるようには見えなかったわよ」
「なんだと!!!」
ティールたちとすれ違った四人組のうち、絡んできた男は未だにティールの態度が生意気だったことに対して腹を立てていた。
「ビッガス、あまり大きな声を上げるな。余計なモンスターが寄ってくるだろ」
「うっ、すまねぇ……でもパルイダ、お前だってあのルーキーたちの態度にカチンと来なかったのかよ」
Cランク冒険者の自分たちに対し、ルーキーたちが嘗めた態度を取ってきた。
ランクの上下関係を気にするビッガスにとって、ティールにその気がなくても嘗められたという認識だったので、まだ心の中から怒りが消えない。
「冒険者は自己責任だから、ルーキーでも遺跡に潜ったらだめだというルールはない……特にここのヤドラスの遺跡ではね」
ルーキー、ベテラン、プロ。それらの立場に関係無く圧し掛かるのが、自己責任という言葉。
森の中に入り、ダンジョンに入り、遺跡に入ってモンスターと戦って仮に死んでしまっても、それは自己責任なのだ。
自分たちに中堅程度の実力があっても、ルーキーたちの挑戦を止める権力はない。
「それに、竜人族の子はただのルーキーじゃなかった。冒険者としてはまだ駆け出しかもしれないけど、実力的には完全に素人の域を超えていたよ。装備していた防具や武器もね」
「そうよね。態度も堂々としてたし、あまりルーキーって感じはしなかった。私が一対一で戦ったら勝てないぐらいの実力はあるだろうね」
「斥候のお前に勝ったところで、前衛の奴らが自慢できるわけないだろ!!」
「声がデカいっての。それに普通の私じゃなくて本気の……殺す気の私でも無理ってことよ」
斥候職が本気で対象を殺そうとすれば、短剣の刃や針先に毒や麻痺の効果が付いた液体などを塗りつけるのは当たり前。
そうなった時の斥候職は何をするかわからないところが恐ろしい。
「そ、そうかよ……でも、どう考えても俺に嘗めた態度を取った奴は、どう考えてもガキだろ」
「ビッガス、それこそ間違いだよ。あの子からは……強いという気配は勿論感じたけど、それ以上に危険だという警告が強かった」
「「ッ!!!???」」
パルイダの言葉に斥候の女性、ティーとビッガスは驚きを隠せなかったが、もう一人だけティールの恐ろしさを解かっていた。
「パルイダの言う通り。あの子、外見は前衛だけど、多分魔法もそれなりに使える」
「シーラ……もしかしてあの子は、魔法剣士ってこと?」
「武器に属性魔力を纏うことは出来ると思うけど、しっかりと攻撃魔法とかも使えそうだから、魔法剣士とは少し違うと思う」
「えっと、それなら魔法の腕はシーラと同じぐらい、ってこと?」
シーラと呼ばれたいかにも魔法使い風の装備を身に纏う女性は攻撃魔法が一番得意だが、その他の系統をそれなりに使えるので、魔法使いとしての腕がかなり高い。
そんなシーラから見てティールは……自身の師匠と似ていた。
「正確には分からない……でも、あの子から師匠と同じ気配がした」
「あなたの師匠って、超凄腕のおじいちゃんのこと?」
「そう、超凄腕のおじいちゃん。師匠と同じ力量とは思わないけど、師匠はとにかく実力を隠すのが上手かった。一緒に生活をしていた私でも偶にもしかして弱くなった? って思うほど隠すのが上手い」
「その度に勝負を挑んでボコボコにされたんだっけ」
「そう、ボコボコのコテンパンにされた」
奪取≪スナッチ≫によって本来覚える筈がない属性の魔法まで覚えたティールだが、シーラの言う通り超凄腕のおじいちゃんには敵わない。
だが、それでも一定水準以上の力は持っている。
「前衛の力を持っていながら、シーラが認めるほど魔法の力を持っている。確かに見た目は子供だけど、あれは完全にルーキーの実力を超えている」
「ということは、もしかしたらビッガスはあの少年の機嫌が悪ければ殺されてたかもしれないってわけね。あんた、いい加減見た目で実力を判断するの止めなさいよね。こっちにとばっちりがくるじゃない」
「うぐっ!! わ、わぁったよ!!!」
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