買う……だけでは終わらない
「ジファーさん、あの奴隷は」
「……お目が高いですね。彼の名前はラスト、竜人族の少年……いや、青年ですね。比較的ティール様のご要望に合うかと思われます。現時点でそれなりに実力があり、年齢が若い……ですが、彼は過去に喉に強い衝撃を負い、言葉を発することができなくなりました」
「な、なるほど……何かしらの過去があったということですね」
「そうかもしれません」
鋭いイケメンフェイスを持つ青年、ラスト。
ティールは中々悪くないと思ったが、やはり声が発せないという点が問題となる。
マジックアイテムの中には身に着けた者同士が念話で会話出来るようになる物があるが、現在ティールはそんな珍しいマジックアイテムを持っていない。
「ジファーさん、あいつの喉を直す方法ってありますか?」
「そうですね……既にラストの喉は不自然な形で治ってしまっています。普通の回復魔法では治せませんが、教会で神聖魔法の使い手であれば、ラストの喉を元の形に治すことが可能でしょう」
「治す手段はあるのか……ちなみに、治すのにいくら必要なんですか」
「おそらく、白金貨一枚です」
ラストの喉を治すのに必要な金額を聞き、ティールは口から魂が抜けそうになった。
(……マジですか。ラストの値段はまだ聞いてないけど、おそらく白金貨数枚ぐらいは必要なはず……ブラッディ―タイガーの件で稼いだ金があっという間に飛んでいく)
内臓などは全て売り、血も半分程は売ったので報奨金である白金貨五枚以外にも、ブラッディ―タイガーの一件で手にした金はある。
だが、有能な仲間を手に入れる場合、かなりの金額懐から飛んでいくことになる。
「……視ても、良いですか」
「えぇ、勿論です」
店主であるジファーからの許可を得て、ティールはラストのステータスを視た。
(……えっ、超優秀じゃん。剣術に大剣術、槍術の斧術。身体強化は勿論あって他に強化系スキルを習得してる。しかもブレスって……そういうことだよな。しかも……ギフト、竜化っていうのはもしかしなくても変身する、んだよな?)
情報料の多さにティールは頭がオーバーヒートしそうになった。
だが、即座にラストを買うと決めた。
「ジファーさん、ラストの値段はいくらですか」
「丁度白金貨四枚ですね」
「……分かりました。あいつを、買わせてもらいました」
「畏まりました、それでは一旦部屋に戻りますので少々お待ちください」
上客が高値の奴隷を買うと決めたことで、店主の顔はやや嬉しそうに笑った。
大きな利益が発生したというのも嬉しいが、やはり奴隷が良識的な主人の元に渡るのは奴隷を扱う者として喜ばしい。
ジファーに言われた通り一旦応接室に戻り、ソファーに座ったティールは今回の買い物に対して、後悔はしていない……していないが、少々やってしまったのでは? というモヤモヤが残った。
「はぁ……合計で白金貨五枚だぞ。いや、あれだけのスキルを持っていて、更に特別であろうギフトも持っている……うん、決して後悔することはない。良い仲間を手に入れたんだ」
自分に言い聞かせるように何度も決して後悔することはないと呟いた。
そして数分後、ジファーとラストが応接室に入ってきた。
「お待たせしました、ティール様」
「いや、全然待ってないです」
ラストは先程まで来ていた服ではなく、それなりの服を身に着けて腰にはロングソードが帯剣していた。
「……えっと、服とかその剣の値段は?」
「そちらは結構です。最低限の服はこちらで用意しますし、ティール様は上客でしたので、ロングソードはサービスです」
「そ、そうですか。ありがとうございます。あっ、白金貨四枚丁度です」
「……確かに白金貨四枚、丁度ですね」
ティールから代金を頂き、ジファーはティールとラストに奴隷契約を行った。
するとラストの手の甲に奴隷の証である模様が浮かび、ティールはラストと見えない鎖で繋がっている様な錯覚を感じた。
「終わりました。これでラストはティール様の奴隷になりました。ティール様、ラストをよろしくお願いします」
「えぇ、勿論です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます