助けた礼をさせてほしい
「全く、俺に注目するのは仕方ないにしても、やっぱりじっくり視られるのは好きじゃないな」
ギルドでサイクロプスや他のモンスターの素材をカウンターに置いてから、ティールに対して多くの視線が向けられた。
そうなるだろうと本人は予測していたが、あまり心地の良い状況ではなかった。
(そこまで神経が削られるってわけじゃないけど……心地良くはないから、なるべく早くソロの状況を何とかした方が良いかもな)
明日にでも奴隷を売っている店を探し、自分の仲間候補を探した方が良さそうだと思いながら歩いていると、二体のオークとオークソルジャーから助けた六人組と遭遇した。
「あっ、あんたはさっきの」
「ん? ……確かオークに襲われてた冒険者か。どうやら無事に戻って来れたみたいだな」
「あぁ、あんたのお陰だよ。そういえば名前を聞いてなかったな」
先程までサイクロプスを探すのに夢中になっていたため、お互いに自己紹介をすることなく別れてしまった。
「俺はティール、Dランクの冒険者だ。よろしくな」
「えっ!!! マジ、かよ」
「あぁ、これでもマジだ。ほら、ギルドカード」
自身のランクを示すの最適な証拠、ギルドカードを同僚に見せる。
「……マジ、だ。えっ、凄ぇな。いや、オークやオークソルジャーを瞬殺したんだし、当たり前っちゃ当たり前なのか」
「そう言ってくれると嬉しいよ。それで、次はお前らのことを教えてもらっても良いか」
「おう、勿論だぜ!! 俺はオルアット、Eランクだ。よろしくな!!」
超元気。それがオルアットの第一印象。
「フィリック、同じくEランクだ。先程は本当に助かった」
年齢はティールの一つ上だが、体格は大人と変わらないほど大きく、性格も大人びている。
「ラック、同じくEランクだ。よろしく頼むよ」
軽い雰囲気を放つが、あまり油断ならない印象。
「スーラです。ランクは同じくEです。先程は本当に助かりました」
貴族の令嬢らしい雰囲気を持つ少女。
「ノエルよ。ランクは同じくE。よろしくね」
元気はつらつ……といった感じではないが、若干オルアット寄りの雰囲気を持つ。
「ゆ、ユキです。ランクはEで、あの……先程は助けて頂き、本当にありがとうございます!!」
少々オドオドしながら深く頭を下げて、頼りなさそうな雰囲気を持つ少女だが、ティールは魔法を使う者としてユキにある程度の才能を感じた。
(なるほどね……やっぱりエリックとリーシアと比べれば現時点では及ばないけど、ユキって女の子だけはまだ戦うところを観てないけど、才能を感じるな)
完全に他人という訳ではなくなったので、こっそり鑑定でステータスは視ない。
視ないが、ユキからだけは明確な才能を感じ取り、少し興味を持った。
「なぁ、今日助けてもらったお礼に飯を奢らせてくれよ!!」
「……それは嬉しいけど、金は大丈夫なのか?」
「あなたがオーク二つと、オークソルジャーの死体を譲ってくれたお陰でちょっと潤ったの。私からも是非お礼をさせて欲しい」
オルアットとノエルだけではなく、他の四人も同じ考えを持っていた。
どう思い返しても、あそこでティールが現れなければ、自分たちは殺されていた。
逃げ切ったとしても、全員は助からない。
そんな状況に追い込まれた自分たちを、目の前の少年は颯爽と現れて助けれくれた。
そんな恩人に礼をしないわけにはいかない。
「そ、そうか……それなら、ご馳走になろうか」
「よっしゃ!! それじゃ、付いて来てくれ」
宿に戻って夕食を食べようと思っていたが、折角同年代の同業者に誘われたのだ。
一緒に夕食を食べて親交を深めるのもありだと思い、オルアットたちのあとを付いて行く。
「にしても、本当に一瞬でオークとオークソルジャーを倒しちまったよな」
「本当に一瞬でしたね。なにかこう……コツみたいなのがあったりしますか?」
そんなものはないだろうと思いながら、あるなら是非聞きたいという思いが隠せないスーラ。
「コツは……特にないな。俺は冒険者になる前から村の外に出てモンスターと戦ってたから、外見からは考えられないぐらい、レベルが高いんだよ」
「それなら納得出来るな。レベルが高いってことは、スキルもかなりの練度って訳だ……でも、良くそんな恐ろしいことを実践してたな」
冒険者になる前からモンスターと何度も戦う……そんな死の危険が高過ぎる行動は起こせない。
ただ、そんな危険過ぎる行動を繰り返してきたと分かったラックは直ぐにティールの強さに理解を示した。
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