頭が回れば気付く

自分の順番が来るの待ち続け、ようやくティールの番が回ってきた。


「すいません、サイクロプスの調査を受けていたティールです」


「かしこまりました。それで、何か手掛かりは見つかりましたか?」


受付嬢は特に手掛かりが見つかるとは思っていなかった。

手渡されたカードの情報を見て多少驚きはしたが、結局手掛かりなどは見つからず、モンスターを狩ってきた。


手掛かりは見つからないと報告を受け、モンスターの素材や鑑定を行う。

調査系の依頼を受けた冒険者が帰ってくると、大抵その流れになる。


(嘘をつくタイプには見えないし……真面目に依頼は受けてきたでしょう)


直感ではあるが、ティールは嘘をつくようなタイプには思えない。

それは当たっており、ティールは嘘をつくことなく……亜空間からサイクロプスの素材と魔石を取り出した。


「ソロで探してたんですけど、運良く背中に大きな傷を受けたオークソルジャーを発見したんですよ。もしかしたらと思って、そいつを倒した後に全力で探したらサイクロプスを発見できました」


「……えっと、少々お待ちください」


「分かりました」


もう一度何を言ったのか訊き返さずとも、ティールが何を言ったのか解る。

なので、亜空間出された素材が本当にサイクロプスものなのかを確認。


鑑定の効果が付与されているモノクルを使用し、素材と魔石が本当にサイクロプスのものだと確認できた。


「本当に、サイクロプスの素材と魔石、ですね……お疲れ様です。それで達成金額なのですが……」


「あっ、受けた通り銀貨五枚で良いですよ」


ギルドはサイクロプスの調査が終われば、討伐用の依頼書を張りだそうと考えていた。

だが、ティールはその過程をすっ飛ばし、ソロでサイクロプスを討伐してしまった。


「いや、しかし上手くいけば討伐金が貰えると思いますが」


「今日は大丈夫です。それより、他にも素材があるんで査定をお願いします」


カウンターには次々と素材や魔石が置かれ、受付嬢達が後ろのテーブルに運んで素材と魔石の査定が始まった。


まだ成人していない子供冒険者がサイクロプスを倒しただけではなく、多くのモンスターを倒した。

そしてその素材を亜空間から取り出す。


つまりそれは空間収納のスキルを持っていることを示す。


ティールを自身のパーティーに引き入れたい。

そう思った冒険者が一気に増えた。


(うわぁ……視線が気持ち悪い。わるいけど、誰かと固定でパーティーを組むつもりはないんだよな)


色々と事情があるので、誰かとパーティーを組む気はない。


周囲の冒険者たちはそんな事情を知らないが、そもそもサイクロプスを一人で倒せるような奴が自分たちとパーティーを組むのか? と思い始めた。


サイクロプスはCランクの冒険者であっても、倒すのに時間が掛かり、ミスをすればぶっ飛ばされて一発で瀕死に追い込まれることもある。

そんな凶悪なモンスターを目先で立っている少年は一人で倒した。


それだけではなく、おそらく今日一日でサイクロプスに遭遇するまで多くのモンスターを倒し続けた。

そんなスーパールーキーに自分たちはメリットを与えられるのか。


少し頭が回る冒険者であれば、直ぐにその現実に気が付く。

冒険者ならソロで行動するのは危険、是非ともパーティーを組むべきだと考えている者もいるが、ティールにとってその危険は大した危険ではない。


「こ、こちらが換金額になります。素材の状態がとても良かったので、金額はそれなりになっているかと思われます」


受付嬢の言葉に嘘はない。

ティールは基本的にブラッディ―タイガーのような格上の相手でなければ、数撃で戦いを終わらせる。

サイクロプスは少々ストレス発散に付き合って貰ったお陰で骨に罅が入っている部分が多かったが、肉や内臓、皮に眼玉などの保存状態は良く、一般的な買取金額よりも割増しで計算された。


「ありがとうございます」


大金を袋にしまい、ティールは身体強化を使用してササっとギルドから出て行った。

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