技術習得に近道はない
「それじゃ、乾杯!!!!」
「「「「「乾杯!!!!!」」」」」
丁度良い酒場に入り、料理が届いたので一斉に飲み食いを始める。
「いやぁ~~~~~、本当にティールが来てくれなきゃヤバかったぜ」
「それは何度も聞いたぞ」
「いや、何度でも言う。お前が来てくれなかったら俺たちの冒険はあそこで終わってた!! なっ!!」
「……そうだな。オーク二体でもかなり苦戦していた。それに加え、後ろではオークソルジャーがどっしりと立っていた。オーク一体ならなんとか倒せたと思うが、あの状況では逃げ切るのも厳しかった」
オルアットの言葉にフィリックは深く頷きながら同意した。
実際にあの状況でティールが間に入らなければ、オルアットたちは全滅していた可能性が高い。
「でも、ティールは本当に強いよな……良い師でもいたのかい?」
「そうだな。エルフと元Bランク冒険者の師がいた」
片方は師と呼べるほど多くのことは教わっていないが、それでも模擬戦の相手などをしてくれていたので、一応師と呼べる存在ではあった。
「凄いじゃない!!! エルフと元Bランク冒険者が師なんて……ちょっと待って、それじゃ魔法も使えたり、するの?」
エルフが師であれば、当然魔法も使えるのではないか。
そんなノエルの単純故に零れた質問にティールは隠さず答えた。
「まぁ、一応な」
魔法に関してはそれなりの才能。平均より少し上の才能しか持っていなかったが、奪取≪スナッチ≫のお陰で、才能がティールより上の魔法使いより扱える属性は多い。
「そ、それは本当ですか!?」
「お、おう。本当だぞ。エルフの師匠がじっくり教えてくれたからな」
これに関しては微妙なところである。
確かにリースはティールに魔法の詠唱や細かい部分を教えたが、ティールが詠唱を破棄して撃てるようになったのはセンスによるところが大きい。
「そ、それは羨ましいです」
「何言ってんのよ。スーラだって風魔法のスキルを持ってるじゃない」
「それはそうですけど、まだ安定して撃ててはいません。それに動きながら撃つなんてまだまだです」
「並行詠唱は一応高等技術なんでしょ。だったらそんなに焦る必要はないじゃない」
動きながら詠唱を行い、魔法を発動する並行詠唱。
このスキルを習得すれば、魔法使いとして一人前と呼べる。
前衛の剣士として戦うスーラが現時点で習得出来ないのは珍しくない。
「そうですけど……でも、剣に魔力を纏うだけだとやっぱり勿体ないじゃないですか」
「……それを言われたら俺も並行詠唱出来てないぞ。そりゃ並行詠唱が簡単にできるようになれば戦いの幅は広がるけどよ」
オルアットは火魔法のスキルを持ち、スーラは風魔法のスキルを持っている。
短時間ではあるが、二人共武器に属性魔力を纏うことができる。
ルーキーでそれだけ出来れば優秀な部類だが、今日の戦いでもっと上を目指さないといけないと思い、少々心に焦りが生まれていた。
「それなら、先に剣に纏った魔力を飛ばせるようになれば良いんじゃないか? それも立派な遠距離攻撃だ。詠唱する必要だってないしな」
遠距離攻撃を考える時に、魔法に固執する必要はない。
武器に魔力を纏い、斬撃や刺突を放つ。それも立派な遠距離攻撃。
「なにも攻撃魔法だけが遠距離攻撃じゃないだろ。もう少し頭をやわらかくしたらどうだ」
「……そうですね。攻撃魔法しか頭にありませんでした」
「剣に魔力を纏った斬撃を放つ、か……でも、それまだ一回も成功したことないんだよな」
武器に魔力を纏い、攻撃を放つ。
その攻撃方法を知らなかった訳ではない。
だが、まだパーティーの中で一人も安定して使える者がいない。
「なら、練習あるのみだな。魔力の斬撃や刺突を放つのはスキルじゃなくて技術だ。しっかりと自分の体に落とし込まなかったら意味がない」
「だよな……近道とかある訳ないよな」
「そういった技術は地道に重ねないとな」
「……あの、ティールさんは私たちを助けてくれた後、急いでどこかに行きましたが、何を探していたのですか?」
「サイクロプスに関しての調査依頼を受けてたんだ。依頼内容としては足跡とかそういうのが見つかれば良かったんだが、俺としては見つけて倒したかったからな」
衝撃の言葉を聞いた五人は、思わず食事の手を止めてしまった。
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