直ぐに消えない痛み

「ふぅーーー、こんなところか」


次の目的地、ヤドラスの遺跡へ向かおうとしていたティールに五人組の盗賊が襲い掛かった。

盗賊たちはティールの実力を正確に測れている訳もなく、油断していた。


その隙を突いて、一分と掛からずに戦闘は終わった。


「なぁ、お前らのアジトはどこだ」


「……ハッ!! てめぇみたいなクソガキに教える訳ねぇだろ!!!」


完膚なきまでに潰された盗賊だが、強気な態度は変わらない。


(仲間の大半が殺されているのにも拘わらず、随分と威勢が良いな)


五人の内、既に三人は殺されている。

残りの二人も重傷を負ってティールから逃げ切れない状態だが、強気な態度だけは変わらない。


「さっさと教えれば良いのに……こいつみたいになりたいか?」


「ぎゃあああああああっ!!!!」


一人の足に向けて酸を垂らす。

動く術がない盗賊は酸を避けることが出来ず、足を徐々に溶かされる。


「あ、あ、あ……俺の、足が! がっ」


「こいつみたいに地獄の苦しみを味わってから死ぬか、俺にアジトの場所を教えて逃げるか……どっちが良い」


自然と殺気と圧が漏れ出す。

目の前の冒険者は自分よりも一回りも歳下の子供だと解っているのに、体が震える。


「わ、分かった教える。教えるから、それは止めてくれ!!」


「最初っからそうしてれば良いのに……俺に負けたんだから初めから素直に頷いてろよ」


残り一人が話すと言ったので、それを信じて足を溶かした盗賊の頭も酸で溶かしてしまう。


「ひっ!!」


「おい、怯えてる暇があったら早くアジトの場所を吐けよ」


躊躇なくもう一人を殺した。

それが盗賊の恐怖心を掻き立て、早口でアジトの場所を正確に話した。


「なるほどな……小さな洞窟。そんなアジトにするには適した場所を拠点にしてたのか」


「あ、あの……全部話したんで、俺はこれで」


「あぁ、さよならだな」


言い終わったタイミングで頭に酸をぶっかけた。


「ぎゃあああ!! な、なん、で……」


「人を殺そうとしたんだから、自分も殺されるかもしれないって思わなかったのか?」


ティールは元々盗賊たちを一人も生かしておくつもりはなかった。

アジトの場所を教えれば見逃すというのも嘘。


最初からアジトの場所を聞き終えた後に殺すつもりだった。


「って、もう死んでるか」


盗賊は顔の半分が解けており、既に絶命していた。

五人全員は殺し終えたので、穴を掘って埋葬。


そして聞き出したアジトの場所に向かうと、確かに洞窟タイプのアジトを発見。


「へぇ~~~、嘘じゃなかったのか」


盗賊からの情報は半分嘘だと思っていたので、洞窟と見張りを見た時に多少の驚きを感じた。

しかし直ぐに気持ちを切り替え、身体強化スキルを全て使用。


「よし、殺す」


その場から全速力で駆け出し、見張り二人が大声を出す前に瞬殺。


そしてアジトの中へと突入。


「あぁ? 何の用だクソガキ「殺しに来たに決まってるだろ」ッ!! ……」


ティールとすれ違った瞬間に次々と盗賊たちが倒れていく。

見た目は大人と子供だが、身体能力は全く逆。


疾風瞬閃を装備していることもあり、脚力では完全にティールが盗賊たちを上回っている。


盗賊の頭も含め、四分程度で全滅。


「盗賊ってどいつも口だけは一人前だよな」


盗賊団の頭だけは並の強さではなかったが、ブラッディ―タイガーと比べれば大したことはない。

それが解っているので、ティールは躊躇なく斬り掛かり、喉を斬り裂いた。


「使える物は貰っていくか」


面倒な埋葬作業を終え、盗賊たちが身に着けていた道具やお宝を回収。

特に驚く道具はなかったが、貯蓄は確実に増えた。


「盗賊団なだけあって、金はそれなりに貯えていたな。盗賊なんだから使い道がないと思うんだけど……もしかしたら、裏で商人と繋がってたりするのか?」


考えたくない内容だが、過去には盗賊団と商人が繋がっていたケースがある。

ただ、今回ティールが壊滅させた盗賊団にそのような繋がりはなかった。


「大金が手に入ったのは幸先が良い……いや、盗賊に襲われたから幸先が良いってのはおかしいか」


今回のイベントはティールにとって良い内容だったかもしれないが、目的地に辿り着くまで不幸が起きないとは限らない。

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