横暴ではない
「て、めぇ……調子に乗んのも大概にしろよ!!! 何様のつもりだ!!!」
「俺は事実を述べただけだ。お前みたいなスーパー馬鹿野郎は放っておいたら直ぐに死ぬ。お前一人だけが死ぬなら別に構わないが、お前のパーティーメンバーまで巻き込まれるのは可哀そうだと思ってな」
一体の強力なモンスターに、単体では強くないが群れをなすとその連携力で敵を仕留めるモンスターと遭遇してしまった場合、パーティーが全滅してしまう可能性はある。
街まで逃げ切れる可能性もあるが、全員が助かる道は限りなく少ないだろう。
そういった状況でどうにか戦って状況を打破するという選択肢もありだが、冷静な判断が下せる者はモンスターの攻撃に対応しながらも徐々に街へ下がっていく。
そしてその途中に上空に攻撃魔法を放ち、周囲にいるかもしれない冒険者に救援を求めるなどの行動を取る。
だが、先程一人で少々強い上位種と戦うと言い出したバーバス。
そこで最初に奇襲は本当に偶々当たっただけで、三十秒と経たずに倒したのであれば問題はなかった。
しかしバーバスは全ての攻撃を躱され、魔力を纏った刃もあっさりと避けられてしまった。
そして大きな隙を突かれ、後方に吹っ飛ばされてしまった。
自分の見栄を張るために、プライドを保つために、成果を得るために戦った結果がこれだ。
(いずれ仲間を道ずれにするかもな。こいつがリーダーなんだから他のメンバーはバーバスに従って行動する……結果全滅となる。なんて未来がちょっとみえる)
まだ冒険者になって数年程度でれば、冒険者として完成していないのでリーダーのバーバスに真っ向から反論出来るようになるかもしれないが、現時点でパーティーメンバーはバーバスのイエスマン。
バーバスの行動次第ではライアの考える通り全滅する危機的状況が訪れるかもしれない。
「バーバス、お前は少し強い程度のゴブリンの上位種に勝てなかった。それは事実なんだよ。お前が宣言した一対一の形をあのまま続行していたら吹き飛ばされたお前はそのまま上位種に殺されたかもしれない。そうだよな、エリック」
「……そうだね、残念ながら十中八九バーバスが殺される可能性の方が高かった。バーバス、君が今回の討伐で成果を上げたかったからか、それとも強い奴と戦って自分の実力を証明したかったから一対一で戦おうとしたのか……その真意は解らない」
おそらく前者なのだろうと解っていながらも、エリックは敢えて言葉を濁した。
「でも、君は勝てなかったんだ……負けたんだよ。それを認めなければ前には進めないんだよ」
「ッ!!!!!」
冒険者としての実力、恋愛のライバルとも思っていた相手からそんな言葉をぶつけられたバーバスは顔を下に向け、血が零れそうなほど力を込めながら拳を握りしめる。
ただ、それは自身の行動を反省している状態ではなかった。
「お前ら……俺をどこまで馬鹿にすれば気が済むんだッ!!!!!」
(そう聞こえるのかもしれないが、単に事実を述べているだけだ馬鹿やろう。他のモンスターがやってくるかもしれないから大声出すなっての)
今回の討伐でバーバスのプライドや自信、心さえもボロボロになった。
だが、全てが砕け散ってはいなかった。まだまだ無意味に吠えることは出来る。
しかしこのタイミングでガレッジたちが最前線から戻ってきた。
「おいおいどうしたんだよお前ら、戦いが終わったらまずは魔石の回収だろ。こっちに来たゴブリンや上位種の魔石は全部お前の物だぞ。てか、あんまり大きな声は出さない方が良いぞ。モンスターを引き付ける原因になるかもしれないからな」
「いや、まぁ……ちょっと問題が起こって」
ティールの表情から確かに何かがあったのだろうというのは察した。
そしてルーキー達をぐるっと見渡し、何が起こったのか全ては把握出来ないがバーバスが問題を起こしたという事だけは理解した。
「はぁーーーー、全く……バーバス、これ以上騒ぐなら俺からギルドに伝え、評価を下げてもらうぞ」
「なっ!!?? いくらなんでもそれは横暴だ!!!!」
「今この場でティールに向かって非難の目を向けている者は君しかいない。それに対してお前に向けられている目は面倒、非難の類が籠っている。それだけでどっちが問題を起こしてお前とティールが対立しているのかは明白だ」
これはガレッジだけではなく、他の冒険者達も同じ意見だった。
「バーバス、もう一度言うぞ。これ以上駄々をこねるなら俺は事実を明確に伝える。そうなればギルドがお前の評価を下げるのは必然だ」
本当のところ、協調性がないという点は伝える。
だが、事細かく説明すれば更にバーバスの評価が落ちるのは間違いない。
「…………分かり、ました」
一応バーバスが矛を収めたので、ルーキー達はようやく魔石の回収を始めた。
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