遭遇する前とその後

結界という新しいスキルを得た翌日、ティールはその日もギルドに向かい、クエストボードの前で依頼書を見ていた。

すると以前三体のブラウンウルフに襲われていた三人組、ライトとサールにセリナと遭遇。


そして三人から一緒に依頼を受けないかと誘われ、ホーンラビットの討伐依頼を受ける事になる。

依頼受付を担当した女性はティールがソロで活動しているのを知っていたので、他のルーキーと一緒に依頼を受けると知って安心した表情になる。


(やっぱりソロで受けるのは珍しいのか。でも、ホーンラビット三体ぐらいなら別にソロで達成出来る依頼だと思うんだけどな)


確かにホーンラビットの討伐依頼であれば冒険者になったばかりのルーキーでも注意を怠らなければ、達成出来なくもない。


ただ、重要なのは標的と戦う前と後だ。

戦力を考えれば倒せるかもしれない。しかし標的と出会う前と出会った後にソロでは倒せないモンスターと遭遇する可能性は大いにある。


そしてパーティーを組んでいれば奇襲にも対応が出来る等々のメリットもあって、大抵の新人は同じくソロで活動している者や、まだ四人以上では無いパーティーに声を掛けて入れてもらう事が多い。


「えっ、それじゃあ殆ど休まずに依頼を受けてるのかい?」


「……一応そういう事になるな」


依頼の受理を終えた四人は早速森の中に入ってホーンラビットの捜索を始める。

そして遭遇するまでティールはライト達に近況を伝える。


「普通は依頼を受けた翌日は休むものだと思うけど」


「あぁ……そうかもしれないな。でも、俺の場合はスタミナがあるってのも理由だけど、一番は倒すのにそこまで体力を使わないからかな」


「投擲だね。あれから僕達も訓練してるよ」


ティールから手っ取り早く覚えられる攻撃方法、投擲を教えて貰った三人はその日の翌日から訓練を始めていた。


「結構肩が疲れるのよね、あれって。そこら辺も何かコツがあったりするの?」


一番前で斥候の役割を担うサールがしっかりと周囲を警戒しながらティールに質問する。


(肩が疲れない為のコツ……なんだろうな? そこらへんは考えずに投げて投げて投げまくってたからな)


何かアドバイスはないかと必死に今までの投擲歴を思い出し……一つ確かなことがあった。


「最初の頃と比べて投げる時にあまり力を入れてない気がする」


「……それって、あんまり速く投げれなくなるんじゃないの?」


「いや、そうでも無いと思う。何て言うか……その方が無駄なく投げられてる気がする。それに腕力に関しては身体強化のスキルか腕力強化系のスキルを使うか、投擲のスキルレベルを上げていけば自然と上がるし」


「それもそうね。投げる時に力を入れず……明確な課題になった。ありがとね」


「我流の知識だから正解かどうかは分からないけどな」


投擲の訓練方法に関しては完全に我流。

それはティールには合っていたが、それが他者に合うかは解らない。


ただ、投擲に関してはそこまで特別な技術では無く、訓練に関しては特に感覚で考えている訳では無い。

なので訓練方法自体は第三者から見て的外れに感じるような内容ではない。


「そ、そういえばティール君はリーシアさん達と一緒にグレーグリズリーを倒したって噂になってるけど、それって本当なの?」


その話題はセリナだけではなく、ライトとサールも知りたいと思っていた内容だった。

三人とってエリックととリーシアは歳が近く、冒険者歴もそこまで変わらない同期に近い仲だが、実力は完全に二人の方が上だと認めている。


そんな二人とティールが協力してグレーグリズリーを倒したという話は、ルーキー達にとってかなり大きな話題だった。


「いや、それはだなぁ……確かにグレーグリズリーを殺したのは俺だったけど、俺のところまでグレーグリズリーが向かってくる前に二人が結構ダメージを与えてたんだよ」


「つまり、いきなり現れたグレーグリズリーに対してティールは反射的に倒してしまったって訳か」


「そういう感じだな。一発目の攻撃は躱されたけど、確か二撃目で倒したと思う」


そこまで大した事ではないといった表情で語るティールだが、三人は遭遇したモンスターが手負いのグレーグリズリーであったとしても勝てるイメージが浮かばなかった。

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