未来への投資
「ふぅーーー、本当にティールの強さには驚かされるよ」
「そうね、どういった人生を送って来たのか本当に気になるわね」
「どういった人生と言われてもなぁ……この前話した通りだけど」
既に自身がどういった人生を送って今に至るのかティールは三人に話している。
ただ、やはり話を聞いただけでは、はいそうですかと納得出来るものではない。
「……まっ、どれだけ連続でモンスターを倒してきたのか。それが一番の要因だな。三人もやってみたらどうだ」
「そ、それって全く休まずにモンスターを狩り続けるってこと?」
「いや、全く休まないってのは無理だろう。それに感知系のスキルが上手く使えなければ獲物を見つけるのにも時間が掛かる。だから……極端に言ってしまえば、討伐依頼を受けずにモンスターを狩るのもありなんじゃないか?」
「それは……でも、結構厳しくない?」
確かに厳しいだろう。
討伐依頼、それは冒険者が達成するべき確かな目標。
目標があれが何をすれば良いのか行動を迷わずに済む。
ただ、その提案にはティールなりの考えがあった。
「厳しいところもあるかもしれない。でも、俺がガキの頃は大体そんなもんだった。俺とライト達では色々と違うだろうけど……モンスターを倒し続ければレベルがあがり、強くなるって事には変わらない。それに、特に倒すモンスターが決まっていないなら、出会った倒せそうなモンスターを片っ端から倒せば良いだろ」
「……その考えには少し納得出来るね」
「それは良かった。それに倒したモンスターの素材は魔石だけは当然回収するとして……他の素材は一番売れそうな物だけ回収する。そうすれば金は稼げるだろ」
討伐依頼を受けていれば成功報酬が手に入る。
でも、期限までに達成できなければ罰金が発生する。
それならば討伐依頼を受けずにただモンスターを狩って素材をギルドに売るだけというのも有りではないのか、そう思うティールだった。
「……だから、今より休息の日を減らしてモンスターを討伐する日を増やせばいいってことね」
「そういう事。ずっとそれをした方が良いとは言わない。そんな厳しい日々は……一年ぐらいでいいんじゃないか?」
「いいんじゃないかって……一年って中々長いのよ」
一年は日数で言えば三百六十日。
確かに長い、しかしライト達これから先の人生を考えればそこまで長くはない時間。
「そうかもな。でも、これからの冒険者人生に投資だと思えば結構短くない?」
「……基本的に戦闘には時間を掛けず、投擲だけで仕留めるのがベストってことかな」
「おっ、解ってるな。連日でモンスターと戦う事になるからな。出来れば早めに戦闘は短時間で終わらせて家に帰って飯を食べる。風呂に入る時間があれば風呂に入って後は寝る。きついかもしれないけど、一年間はあんまり娯楽に気を移さない感じになるけどな」
「ティールが考えるペースで戦い続ければお金も随分貯まるでしょうね」
「そうだな。でも、武器にはあんまり金を惜しまないようにな。武器は自分の命を預ける大切な相棒なんだし」
武器は確かに消耗品ではあるが、持ち手の命を守る盾に……敵を穿つ矛にもなる。
そんな大切な相棒をケチればいつか後悔する日が来てもおかしく無い。
「・・・・・・そうだね。やってみる価値はある」
「別に強制はしないぞ。もう一人パーティーに入れて強化するって手もあるし」
「それも考えておくよ。でも、僕達自身が強くならなければ意味がないからね」
ライトの眼には先程よりも明らかにギラついた意志が宿っていた。
(思っていたより熱い奴だな。さて、残りの二人はどうだ?)
ライトの心には火が付いた。
しかしパーティーにはサールとセリナがいる。彼女達の意志を無視して実行することは出来ない。
「ライトと同じ考えよ。やってみる価値はある」
「わ、私も強くなりたいので頑張って付いて行きます」
二人の心にもしっかりと火が付いた。
三人に一年を通した目標ができたところで今回の標的が迫る。
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