デメリットもある

コボルトメイジの周囲には結界が張られており、並みの物理攻撃が効かない壁が用意されていた。


(まだ攻撃魔法の詠唱を行っているって事は、攻撃魔法は障壁をすり抜けて相手に攻撃出来るんだろうな……それはメリットだけど、デメリットでもありそうだな)


瞬時に結界のデメリット見抜いたティールだが、そこを突くのでは無く……真正面から突破することにした。

身体強化と腕力強化のスキルを併用し、そのまま全力で結界を殴りつけた。


「お、らっ!!!!!」


ティールの全力パンチを受けた結界はその一撃に耐えきることが出来ず、見事に砕け散った。


「ッ、ッ……」


今まで自分の結界を砕かれたことが無かったコボルトメイジは呆気に取られてしまう。

自身を守ってくれる最強の盾がいとも簡単に砕かれてしまった。


せっかく詠唱を完成させたファイヤーボールを放つのも忘れる程の衝撃を受けていた。


「……来ないなら遠慮無く」


結界を砕いた時点で攻撃魔法が飛んで来ると予想していたが、それが飛んでこない。

なのでこれ幸いと思い、結界を殴り砕いた手とは逆の手で魔力の弾丸を押し出すように放ち……そのまま頭部を貫いた。


「確かに有能なスキルなんだろうけど、あんまり過信し過ぎるのも良く無いって事だな」


全てのコボルトを倒し終えたティールは奪取≪スナッチ≫を使い、全てのスキルと魔力を奪った。


(……よし、結界ゲット。これでもう少し安心して夜は寝られるな)


アシッドドラゴンが見張っているだけでも中々に安心な状況なのだが、結界が加われば更に安心して寝られるのは間違いない。


「……結界」


実際に結界を発動し、その強度を軽くノックしながら確認する。


「結界に込める魔力の量で強度は変わるかんじか」


コボルトから魔力を奪った事で多少の余裕があったので、そこそこ魔力を込めた張った結界。

それhコボルトメイジが生み出した結界より堅いものだった。


「結界が生み出されるスピードも悪くないし……誰かを守るのにも役立ちそうだな」


今のところソロで冒険者活動をしようと思っているティールだが、それでも依頼を受ける時に他の同業者と一緒に受けるのは嫌では無い。


(まっ、正直一緒に依頼を受ける人の性格とかによるけどな、そこら辺は)


基本的に面倒な性格では無く、きっちりと仕事を果たす者であれば一緒に仕事をしても構わない。

それがティールの考えだった。


「さて……さっさと剥ぎ取るか」


コボルトの素材も多少なりとも金になるのでしっかりと剥ぎ取る。

そしてコボルトメイジが持っていた杖も何かしら使えるかもしれないという事で、空間収納でしまった。


(……もしこれを人前で使ったら、杖を持っていた人に何か言われたりする、か?)


あり得なくはない可能性が頭に浮かぶが……とりあえず何とかなるだろうと思い、その日はそこで冒険を切り上げて街に戻る。


そして一直線でギルドに向かい、討伐依頼の証明部位を見せて今回の冒険で手に入れた素材や魔石を全て見せる。


「えっと……これ、全てを一人で手に入れたということ、ですよね」


「はい、今のところは誰ともパーティーを組んでいないので」


至極当然といった表情で受付嬢の問いに応えるティール。

だが、受付嬢からすればティールが今日上げた成果はランクに見合わないものだった。


(まだ冒険者になって一週間経つか経たないかのルーキーがバインドスネーク三体の討伐依頼を達成してしまう、それだけでも驚きものなのに……それに加えてコボルトが二体とコボルトメイジを一体を討伐……嘘をついてる様には見えないし)


実際にティールはバインドスネークの魔石や素材を三体分、そして二体分のコボルトの素材とコボルトメイジの素材をカウンターに置いた。


(……とりあえず規定を満たしているし、ランクアップさせないとね)


「少々お待ちくださいね」


「分かりました」


受付嬢はティールが持ってきた素材の換金する分の金を取りに行き、ギルドカードのランクアップも済ませてしまう。


「はい、どうぞ。ティール君はランクアップの条件を満たしたのでHランクからFランクに昇格しました。そしてこちらが素材と魔石を換金した分のお金になります」


「そうなんですか。ありがとうございます」


(……ず、随分とクールな子なのね)


まだベテランと言えるほどの経験は積んで無いが、それでもそこそこ経験年数がある受付嬢。

そんな中でランクアップを果たした子供達は皆大なり小なり喜びが表情に現れていた。


しかしティールにはそれが無く、お金とギルドカードを受け取って一礼し、そのままギルドを出て行った。

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