宜しくないトラブル
(相変わらず遅い……いや、今回は別にそういう訳では無いか。元々、俺が入る隙間なんて無かったわけだ)
気になった女の子と年頃の男の子が想像するような展開は起こらない。
そんな現実を突きつけられた。
「……あれか、もしかして結構ガチで惚れてたのか?」
「いや、別にそういう感じじゃ無いですよ。この前会ったばかりですし」
「でも一目惚れってことかもしれないだろ。事実、そういった衝動的な恋をしてしまう奴はいるからな」
ゾルは冒険者時代も含めて多くの人と関わって来たが、やはり一目惚れという理由で人を好きになった者は何人かいた。
それが成功するかどうかは置いといて。
「どう、でしょうね? 確かに気にはなっていたと思います。ただ……恋人になりたいかと言えば、そうでも無い様な気もします」
「そうでも無いってことは……男の性的な感覚で気になってるのか」
オブラートに考えを包んだ言葉だが、ティールはゾルが何を言いたいのか良く解った。
「あぁ……まぁ、そういう感覚が多少はあります」
「そうかそうか。そんなに恥ずかしがることは無いぞ。寧ろ男としてそういう感覚があるのは当たり前だ」
ティールがリーシアにそういう意味での感情を抱いている事にゾルは肯定的であり、否定しない。
寧ろそういう感覚を持ってしまうのが当然だと心の底から思っている。
(男なんて基本的にそんなもんだ。リーシアに気がある男の冒険者なんて口ではなんとでも言えるが、そういう感情を持っている奴が大半だ。というか、男なら反応してしまうのが当然だろうな)
もうそろそろおっさんと呼ばれても仕方ない年齢に突入するゾル。
リーシアとは親子ほど離れた年齢なのでなんとも思わないが、ある程度性欲が残っている男ならば反応してしまうのは仕方がない。
「その気持ちは解らんでも無いが……とりあえずリーシアとやるってのは無理だと思うぞ」
「それは分かってますよ。別に俺はあの二人と仲良くしたいなとは思ってるんで」
「そうかそうか。それは安心だ」
冒険者が同業者を性的な意味で襲ってしまう。
それは決して無い話ではない。
確かに冒険者という過酷な職業で生活している女性達は男勝りな部分がある。
前衛ならば華奢という言葉は全く似合わず、寧ろ剛力という言葉が似合う者までいる。
なので男の冒険者達は恋人や妻という存在を同業者以外の存在に求めることが多い。
ただ、そんな冒険者の中でも美女、美少女という言葉が似合う者はいるのも事実。
圧倒的強者ならば接するのが恐れ多く感じてしまうが、そこまで強さが無ければ可愛く思えるもの。
特に後衛職の女性冒険者達には外見的なか弱さが少々残っている。
なので偶々一緒に冒険する機会があり、そこで性欲が抑えきれなくなった男の冒険者が女性冒険者に性的な意味で襲い掛かってしまう事件は少々ある。
その一件が明るみになれば男性側の冒険者が色々な意味で人生終了するのだが、残念ながらそうでない場合もある。
(俺の勝手な予想だが、ティールはCランク冒険者をタイマンで倒せる実力がある筈だ。既に知り合ってるみたいだから一緒に依頼を受けることもあるだろう。そんな時にティールが耐え切れなくなったら……うん、アウト過ぎるな)
元冒険者のゾルから視て、ティールには何かある。
鑑定系のスキルやギフトは持っていないので、何がそう思わせるのかは解らない。
でも、とりあえず並ではないという事だけは感じる。
(何て言うか……モロ強者の雰囲気が出てるって訳じゃ無いんだよな。でも、何か底知れない実力がある、もしくは眠っているって感じがする。俺の勘がボケていなかったら正しいだろう)
その勘はボケても錆びてもおらず、見事に的中していた。
奪取≪スナッチ≫、このギフトがティールの戦術の幅を広げ、一気に実力を上げる。
戦う者達からすれば異質な存在であることには間違いない。
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