うっかり倒してしまった
「……やっぱりこんなもんだよな」
運良くゴブリンの群れを見つけたティールだが、その戦闘時間は十秒と掛からなかった。
ゴブリンの気配感知に反応しない位置から石ころを三つ全力投球。
相手の数は六体。石ころが投擲のスキルによるコントロール補正により一体の脳天を貫いた後もティールの思い通りの動き、六体とも脳天を貫いてしまう。
「我ながら良いスキルを鍛えたものだな」
投擲のスキルだけで低ランクのモンスターは大体倒せてしまう。
勿論、それは個人の腕力などによって威力は変わってくるが、ティール程の腕まで鍛えてしまうとEランク以下のモンスターは相手にならない。
(個人的には楽に稼げてラッキーって感じだから良いんだけどさ)
大した労力も使うことなく銀貨一枚を稼げてしまう。
一般的なルーキーであれば相手がゴブリンであっても警戒して挑まなければならない。
しかし幼い頃から鍛えていた立派な投擲という武器を使うことで相手を瞬殺。
解体もそこそこ得意になってきたティールが魔石を取りだすまで大した時間は掛からない。
「さて、今日の依頼は終わりだ。グリーンウルフの素材や魔石も手に入った。良い感じに稼げるんじゃっ!!??」
自身の後方から急激に迫る足音や無造作に折られる木々の音を察知し、気配感知を即座に発動。
するとティールの方向にダッシュでグレーグリズリーが近づいて来る。
「いきなりのイレギュラー、だなッ!!!」
自身の前に姿を見せたグレーグリズリーに対し、相手が焦りに焦っている状態だと判断したティールは最速でマジックブレードを喉元に向かって放つ。
しかしそこは腐ってもDランクのモンスター。
地面に倒れ込むようにしてマジックブレードを躱した。
「なんだ、焦ってるわりにはやるじゃん」
だがティールは無慈悲にも第二攻撃を放つ。
それは先程六体のゴブリンを倒した手段と同じく投擲。
ただし今回は石ころに魔力を纏っての投擲なので、威力が前回と比べて上昇している。
流石にその攻撃まで躱すことは出来ず、ゴブリンと同様に頭を貫かれてしまう。
「……あぁ? このグレーグリズリー、もしかして……」
殺し終えたグレーグリズリーを良く見るとティールが付けた頭部の風穴以外にも傷が多数存在した。
(ヤバいなぁ……俺以外の冒険者が狩っていた途中だったのか?)
ある冒険者が狩っているモンスターは他の冒険者が故意的に攻撃して討伐するのはルールー違反だが、故意が有るか無いか。それは非常に判断が難しい。
なのでその場にいた冒険者同士が話し合いで所有権を決める事になる。
「あっ、なんでグレーグリズリーが倒されてるのよ!?」
「本当だね。あれ? もしかして君のとこに来てしまったのかな?」
「あ、あぁ。いきなりこっちに来たから悪いが殺した」
グレーグリズリーは今のティールの実力を考えれば大した相手では無い。
しかしそれでも完全に油断して良い相手でも無く、速攻で殺すことに越したことは無い。
「なっ、そいつは私達が追っていた獲物なのよ!!」
「あぁ~~……そうみたいだな。すまん」
基本的にモンスターの所有権は倒した者にあるので、今回の場合は止めを刺したティールに死体の所有権がある。
(やっぱりこういう展開になるよな。でも流石にそれを瞬時に見分けるのは無理だったし……仕方ないよな)
ティールは自分にそう言い聞かせながら無理矢理納得するが、今回の場合は決してティールに落ち度は無い。
寧ろどちらかと言えば、グレーグリズリーと戦っていた二人に落ち度がある。
「やめるんだリーシア。どちらかと言えば、グレーグリズリーを逃がしてしまった僕達に落ち度があるんだ。彼がグレーグリズリーを単独で倒せる実力があったから良かったものの、そうで無ければ大惨事になっていた可能性だってある」
「う、そ……それもそうね。いきなり怒鳴って悪かったわ」
「いや、こっちもグレーグリズリーの様子を確認していなかった。それが解っていれば対応は変えられていたしな」
正直グレーグリズリーに関してはどうでも良く、ティールは二人の容姿……特に女の子の方に興味が向いていた。
片方は金髪の優男であり、レントの強化版というイメージが強く、筋肉も太過ぎない程度に付いる。見事な細マッチョ。
そして女の子は青髪のロングストレートに少々幼さが残る美人顔。そしてローブの上からでも解かる巨乳。
ティールがその容姿やスタイルに見惚れてしまうのも無理が無い程に整っている。
(……凄く良いな。ただ、俺の息子よ。今はちょっと収まってくれ)
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