何かの縁だ

「え、えっと……そ、それは冗談では無く、本当なのかい?」


「あ、あぁ。昨日ソーブルに初めてやって来たんだ」


冗談では無く事実。昨日初めてソーブルにやって来たのも、冒険者登録を昨日行ったのも嘘では無い。

ただ、ティールの実力と現ランクは完全に詐欺と言える。


「そ、そうなの……おっと、僕の名前はライトだ。ランクはFなんだ、よろしく」


「私はサールよ。ランクはライトと同じでFランク」


「わ、私はセリナです。二人と同じでFランクで、本日は助けて頂いて本当に有難うございます」


三人はティールより経歴は先輩であり、ランクは一つ上のFランク。

しかし勿論の事、実力がティールより上という訳では無い。


ただ、HランクからFランクに上がるには街の中で行える依頼を何回も受けてギルドからの評価を上げ、戦闘訓練をギルドが指定した回数分受ければ上がれる。


(……装備は貯めたお金で買ったか、譲って貰ったって感じの物ばかりだな)


ティールの眼から視て、ライト達が使っている装備は決して上等なものでは無い。

だが、ルーキーが装備するには丁度良い武器ではある。


「三人は今日、なんの依頼を受けてたんだ?」


「薬草採取の依頼を受けていたんだ。無事に薬草を採集する事は出来たんだが、帰り道にブラウンウルフの奇襲を受けてしまってね」


「そうか……まぁ、流石に三体同時の奇襲は運が悪いとしか言えないな」


昔のティールならいきなり三体のブラウンウルフに襲われたら若干パニックになってもおかしくは無い。


(ライト達はそこまで戦い慣れている訳でも無さそうだし、ブラウンウルフ相手ならどう立ち回って良いのか解らなくなっても仕方ないよな)


ここで会ったのも何かの縁だと思い、ティールはライト達にモンスターと戦うための対策を教える。


「ブラウンウルフ……いや、ブラウンウルフだけじゃないな。獣系のモンスターは咬みつきを行う事が多い、あとは引っかきか。そういうのを避けられるのが一番良いんだけど、それが出来ない場合や状況の時は小盾があると便利だ。バックラーとも言うのか?」


「バックラーを……それで、もしかしたら殴れば良いのかい?」


「そうだ。タイミングを合わせて殴る。ただ、それは本当にタイミングを見極められるようになってからで構わない。バックラーを持っているだけで防御出来る攻撃が増える。あとは……サールさんは弓の他に短剣でも使えたら便利かな」


視線を今度はサールに移し、ティールはアドバイスを続ける。

普段は少々気が強いサールだが、命を助けてくれた恩のあるティールの話を素直に聞く。


「普通に接近戦で使えるようになれば、それはそれでありだ。後は投擲すれば弓が無くなった時にもなんとか対応出来ると思う。まぁ、投擲といて扱うなら短剣も消耗品になるけど」


「……いや、十分のアドバイスよ。短剣ね……帰ったら少し試してみるわ」


そして次は自分にもアドバイスが貰えるのかと思いながら期待しているセリナに目線を移す。


「セリナさんは……腕力にはあまり自信が無い?」


「えっと、そうですね。一応回復がメインですので、あまり力の方は無いです。や、やっぱり腕力はあった方が良いですか?」


基本的に戦士タイプでも無いセリナは自分の腕力に全く自信が無い。

しかし今回仲間であり、友達でもあるサールが怪我を負ってしまったのは自分のせいでもあるので、伸ばせる力があるなら伸ばしたいと強い気持ちを持っている。


「そうだな。モンスターに接近された時の反撃用として、メイスを使えれば一番有効だと思う。ただ、一応打撃系の武器だからある程度の重さはある。それを難なく振り回せるようになる為に、やっぱり腕力は必要かと思います」


自身の腕力を鍛えるという選択が一番安上がりなのだが、アクセサリータイプのマジックアイテムならば装着者の腕力を向上させる指輪等も存在する。


だがそういったマジックアイテムの値段はある程度するので、今のライト達の懐では少々厳しいというのが現実。


そして最後にティールは自身が一番得意としている技術を三人に伝える。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る