己の手札を確認

「それで、これは三人共出来る内容なんだけど、投擲スキルが役に立つと思うよ」


「投擲というと……投げる投擲だよね」


「あぁ、その投擲だ。投擲は腕を上げるとこういう事も出来るんだ」


落ちている石ころを拾い、適当に投げる。

投げられた石ころは直線に進むだけでは無く、縦横無尽に動いてから地面に落ちる。


「こんな感じで適当に投げても思い通りに動いてくれるんだ」


「す、凄いですね」


「だろ? ただの石ころでも投擲のスキルレベルを上げていけば威力や貫通力も上がる。それに、石に魔力を纏わせればそれなりに威力が上がる。Eランクのモンスターぐらいなら一発で倒せるぞ」


「そ、それは凄いですね。私にも出来るようになるでしょうか?」


「あぁ、問題無いと思うよ。投擲のスキルレベルさえ上げれば可能だ。それにセリナさんは魔力の量が二人よりも多いから石に魔力を纏って投擲出来る回数が多い」


石に魔力を纏うのと纏わ無いとでは威力に大きな差が出る。

勿論自身の魔力を物体に纏わせるというのも技術の一つなので、センスが無ければそう簡単に行うことは出来ない。


しかいそれは努力次第で何となるので、努力次第で三人共出来るようになる。


「訓練に掛かる費用も無く、実戦でもそこら辺に落ちてる石ころを投げれば良い。乱戦ならモンスターの死体を投げるのもありだな」


過去に多数のモンスターに囲われた際にmティールは思い付きでモンスター死体を投げつけた。

するとモンスターの死体にはある程度の重さがあるので、ティールが思っている以上の威力を見せた。


「それと、戦う上でのアドバイスだったら……今自分達には何が出来るかっていうのをしっかりと把握しておいた方が良いと思う」


「それは状況によって適した攻撃を行えるようにするためかしら」


「その考えで大体合ってる」


サールの考えはティールの考えと大体合っているが、まだ足りない。

攻撃だけを考えていれば言い訳では無い。


「ただ、もっと言うと逃げる為でもある。自分達の攻撃が攻めている状況でどう使えるのか。強敵から逃げている状況ではどう使えるのか。そういうのが解っていれば無理ない冒険が出来る」


「……す、凄いね。ティールはいつもそういう事を考えて行動しているんだね」


「あぁ……まぁ、一応な。自分の手札がどの場面で何に使えるか、覚えておいて損は無いって教えられたからな」


リースとジンに教えられたことを思い出す。


(あの二人って結構心配性というか……まぁ、俺の年齢で冒険者をやっているという事を考えれば心配性になっても仕方ないか)


ティール程の年齢で冒険者になる者が多い訳では無いが、決して珍しく無い。

中には生きていくには冒険者という道しか選べない子供もいる。


「俺がアドバイス出来るのはそんな感じかな?」


「いや、本当に有難う。助けて貰った上にアドバイスも貰ってしまって……本当に感謝の言葉しかないよ」


「ライとの言う通りね。私達がもっと稼げるようになったらご飯でも奢らせて貰うわ」


「い、いつかこの恩は絶対に返します」


そんなに重く感じなくても良い。

そう思うティールだが、三人にとっては本当に自分達はここで死ぬかもしれないと命の危機を感じていた。


そこで颯爽と現れて数体のブラウンウルフを瞬殺したティールに恩を感じるなというのは無理な話。


「そうだなぁ……まっ、今度飯でも奢ってくれると嬉しいよ。さて、他のモンスターが寄って来る前にブラウンウルフを解体してしまおう」


肉、爪、牙、毛皮、魔石と売れる部分が多いブラウンウルフの死体をそのまま放置するのは非常に勿体無い。

四人で手分けして解体を行う。


そして解体が終わるとティールは自分の取り分を魔石だけで構わないと伝える。

それに三人は猛反対。


「確かに魔石は一番高い素材だが、それでもブラウンウルフはティールが倒したモンスターだ。せめて牙や爪はティールが持つべき素材だ」


ライトの言葉にサールとセリナも同意するように何度も頷く。

しかしティールとしてはブラウンウルフの討伐依頼を受けていないので、魔石以外には大して興味が無い。

なのでお金には困っているであろう三人に他の素材は渡した方が良いと考える。


そして結果的にティールが三人に魔石以外を押し付けるような形で取り分の話は終わった。

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