間に合った

討伐依頼のスライムを見つける前にホーンラビットと遭遇したが、余裕で討伐。

そしてようやく見つけたスライムも投擲で瞬殺してしまい、本日のティールの仕事はそこまで時間が掛からずに終わった。


新人冒険者が初仕事を終わらせる時間としてはかなり早い。

そしてティールは特に怪我を負う事無く道具も消費していない。

使った道具は森の中に落ちていた石ころのみ。


(元々倒したことがあるモンスターの討伐だったから大して労力を使わなかったな)


ホーンラビットの肉に皮に角と魔石。そしてスライムの魔石。

これらをギルドで売れば討伐依頼の報酬意外に金が入って来る。


どれもランクが低いのそこまでの金額にはならないが、それでもそれを全てティール一人が受け取るのである程度お金に余裕が出来る。


帰ったら夕食は何を食べようか。そんな事を考えていると森の中から悲鳴を一つ聞こえた。


「……冒険者、か? そこまで遠くは無い、な」


助けに行くべきか否か。仮に冒険者を襲っているモンスターがCランクの場合、おそらくティールは勝てる。

ただ、その場合目立つ事を避けようと決めていたティールの計画が崩れてしまう。


(そういうのを考えると少々面倒……面倒なんだけど、もしかしたら死者が出るかもしれないんだし、そんなことを考えてる場合じゃ無いか)


自分がこの悲鳴を見ぬフリをしたら誰かが死ぬかもしれない。そう思ったティールは身体強化のスキルを使用して速攻でその場所へと向かった。


そして走ること約一分、三体のブラウンウルフに囲まれている三人の冒険者を発見する。


(ほっ、ブラウンウルフか。それなら倒してしまっても問題無いよな)


ブラウンウルフはEランクのモンスターであり、確かに爪も牙も危険ではあるがそれ以外に何か攻撃方法があるわけでは無い。


(同じ系統のブラックウルフでもそっちはCランクだからな。とりあえず、一体死んどけ)


足音や気配を消すことなくティールは三人の後ろから飛び出し、一体のブラックウルフに向かって石ころを全力投球。

確かにランクの低いブラウンウルフではあるが、それでも速さはEランク帯の中でも高い方なので油断せずに殺す。


「なっ!? だ、誰だ!!!」


「とりあえず味方だ。だから戦えそうなお前は後ろの二人をしっかり守っていろ」


そう告げるとティールは身体強化と脚力強化のスキルを同時使用し、ブラウンウルフが反応できない程の速度で接近し、そのまま一体の首を長剣で切断する。


そして振り下ろした長剣を体を捻りながらそのまま一回転させ、今度は下から振り上げて斬殺。

残りの一体はティールが自分達の直ぐ隣に接近していた事には気が付いていたが、その剣速には反応売ることが出来ず、何も抵抗する間も無く視界が真っ暗になった。


「ふぅーーー……よし、問題無いな」


基本的にモンスターは首を斬れば死ぬが、誰がか操っていたりした場合は首を斬っても動く場合がある。

そんな事件のような場面に遭遇するとは思っていないが、念のためしっかりと死んだかどうかを確認するティール。


「よう、大丈夫か?」


「あ、あぁ。その……助けてくれた有難う、本当に助かったよ」


「どういたしまして。そっちの二人も大丈夫そうだな」


ティールと同じ年頃の少年が守っていた怪我を負った少女と、その少女の傷を癒していた少女。

片方の女子の怪我を既に癒えており、二人の無事も確認出来た。


「助かったわ」


「あ、ありがとうございます!!!」


「いや、たまたま悲鳴が聞こえてきたから来てみただけだ。それに……もう傷は大丈夫みたいだな」


「ええ、あなたが助けてくれたお陰でセリナが回復魔法を使うのに集中出来たの」


恰好が狩人の少女の言葉を聞いてティールは三人がそこそこバランスの取れたパーティーだと瞬時に分かった。


(回復魔法か、珍しいスキルを持ってるんだな? それともギフトとして授かったスキルか? どちらにしろレアなスキルには変わりないな)


回復魔法、光魔法、聖魔法、水魔法。これら四つのスキルの中に回復系の魔法が含まれている。

その四つの中でも水魔法は比較的習得しやすい魔法ではあるが、その他の四つは真面目に適性が無ければ習得することが出来ない。


「そっか、とりあえず大きな怪我が無くて良かったよ。っと、まだ名乗って無かったな俺はティール、Hランクの冒険者だ。よろしく」


そんな簡素の自己紹介に三人は信じられないといった表情で驚く。

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