その角は一応危険

街を出たティールはソルートから一番近い森に入り、三体のスライムを探し始める。


「結構広そうな森だけど、スライムぐらいすぐに見つかるだろう」


パレス村で生活していた時も村の外の森でスライムなどの珍しく無いモンスターは直ぐに見つかる。

なので今回の討伐依頼に必要なスライムの体液も直ぐに見つかるだろうと考えている。


(今回はただ狩るんじゃなくて依頼って事を意識した方が良いよな。魔石だって買い取ってもらうことが出来るんだし)


村で生活していた時、ティールはモンスターの素材を壊さずに手に入れる事に関してそこまで苦手では無かった。

しかし躊躇無く攻撃を放った場合はうっかり潰してしまう事がある。


「……スライムに出会う前に先ずはホーンラビットの討伐か」


木の陰から現れたモンスターはホーンラビット。

過去にティールは何度も倒しており、特にどう倒すかなどを考える必要は無い。


ただ、一般的な冒険者になりたての者達からすれば警戒しなければならない相手だ。

額から生えるその角は新人冒険者の体を容易に貫く。


避けるか盾でガードするかの対処を取らなければ大怪我を負う可能性がある。


「フシュゥ~~~~……ッ!!!!」


「まっ、そういうパターンで攻撃してくるよな」


脚力強化を使用してからの突進。その突進は個体によっては突進スキルを発動しての攻撃。

それは普通の突進とは違い、身体能力が突進時のみ強化されてホーンラビットの場合はその角の貫通力も増す。


(この突進で腹に大きな穴を開けられてしまうルーキーがいるという話を二人から聞いたけど……単に横に躱せば良いだけだよな)


ティールはいつも通りホーンラビットの突進を躱して手に持っていた石ころを投擲する。


投擲も突進と似たような効果を持つスキルであり、投擲という動作を行う際には使用者の腕力とコントロールが向上される。


投擲はもはやプロの領域と呼べる域に達しているティールの投擲をホーンラビットの様なモンスターが躱せる訳が無く、耐える事も出来ない。


結果頭部を横から貫かれてそのまま地面に落ちて動かなくなる。


「……よし、相変わらず絶好調だな」


ホーンラビットを倒し終えたティールはそのまま解体作業に移り、手際良く捌いていく。

ティールの解体の腕は既にベテランの腕前と変わらず、ホーンラビットの大きさ程度であれば大した時間も掛からず終わってしまう。


「肉は……今食べてしまうか」


朝食を食べてからそこそこ時間が経っていたのでティールは空腹を満たすために木の魔力で薪用の騎を生み出し、おれに火の魔力から生み出した火を付けてホーンラビットの肉を焼いていく。


「……うん、こんなもんで大丈夫かな?」


焼けた肉をそのまま大きな口でかぶりつき、次々と肉を腹に収めていく。

ホーンラビットの血の匂いや焼き肉の匂いに他のモンスターが惹かれてやって来てもおかしくは無かったが、ティールの食事中に他のモンスターがやって来ることは無く、昼食の邪魔をされることは無かった。


「さて、探索を再開するか」


魔石と角に毛皮もいっかりと亜空間に入れて再びスライムを探し出す。


「なんか、村の近くの森とあんまり雰囲気は変わらないんだな」


少し前まで探索していた森と比べて現在行動している森を比べても、感じてしまう緊張の度合いは対いして変わらない。

それにティールは少しつまらないなと思うが、それはまだティールがこの森で生息するモンスター全てに会ったことが無いからそう思えるだけ。


ティールがグレーグリズリーに対して感じた恐怖を与えるモンスターがこの森にはいない……なんて保証はどこにもない。


気が少し緩みながらスライムの捜索を続けること一時間、ホーンラビットと似たような実力程度のモンスターと遭遇して戦うことがあったが、無事全てに勝利。


そしていよいよお目当てのスライムと遭遇する。

しかしその数は討伐依頼に必要な数より多く、五体いた。


「まっ、別に倒す数が多くても構わない」


ティールは再び石ころを投擲。

敵の存在に気付いて行動に移ろうとするスライム達だが時すでに遅く、放たれた石ころはスライム達の魔石を体から押し出していく。


そしてそれは一体の魔石を押し出すだけでは終わらず、五体全ての魔石を石ころで押し出してしまった。


「よし、上手く行って良かったよ。魔石もお金になるから出来れば壊れて欲しくなかったし」


石ころを投げる際に魔力を消費し、自身の意志で軌道を変えた。

その結果スライム達は何もすることが出来ずに第二の心臓と言われている魔石を取り出され……短い人生が終わってしまった。

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