大量の魔石、どうしようか

こっそりと村から抜け出し、一人でモンスターを狩る日々を続けるティール。

ギフトを得たティール五歳からの三年間、ひたすらモンスターを狩り続けた。勿論雨の日など狩りに出かけられない日や親の仕事を手伝う日などもあり、それほど全ての日を狩りに使えた訳では無い。


だが、ティールとしては同世代の子供達と遊ぶよりも村の外に出てモンスターと戦う方がよっぽど楽しく、自分が成長しているという実感を得ていた。


その間も投擲の訓練や我流ではあるが人型のモンスターを倒した際に得たスキルを無駄にしないために長剣や槍、短剣などを使って素振りを行っていた。


しかしここで一つ問題が起こった。

生活魔法という複数存在する属性魔法の中では便利魔法と呼ばれている魔法を覚え、クリーンという汚れを落とす魔法を覚えたティールは魔石の剥ぎ取りを六歳の頃から始めた。


誰かに教わるのではなく、手探りの状態で始まった解体は上手く行かないことばかりだったが、数をこなすにつれて魔石を取り出すだけのことならば何の苦も無く行えるようになった。


そしてそれらの魔石をティールは村の外の土の中に隠していった。

ただ、基本的に魔石は小さい物が多いのだが、塵も積もれば山となる。


貯め込んだ魔石の量があまりにも多くなったティールはそれをどのようにして自分に利がある処理しようか悩む。


「本当にどうしようか……肉に関してはその場で食べてしまえば良いだけだから処理も楽なんだが」


現在ティールはバインドスネークというFランクのモンスターと戦っているが、その表情には確かな余裕が浮かんでいる。

それは何度もバインドスネークとの戦闘経験があり、一対一の勝負では絶対に負けないという確信があるからだった。


その証拠にバインドスネークの尾による攻撃や咬みつき、毒液などによる攻撃を全て躱している。


「……あの人に渡せば等価交換として何かくれるか?」


村には錬金術師として活動しているが、村一番の魔法使いとも言われている人物が開いている店がある。

錬金術には魔石を使うと聞いたことがあるティールはその人に今まで自分が貯め込んで来た魔石を渡せば、何かしら需要のある道具に交換してくれるのではと思い付いた。


「そうと決まれば、明日はその人に魔石を渡しに行こう。袋は……いつものこれを使えば良いか」


元々はゴブリンが腰にぶら下げていた袋だが、クリーンを使ったので匂いや汚れは落ちている。


「さて、さっさと倒して回収しよう。ついでに今日の昼食にしてしまうか」


ティールは慣れた様子でバインドスネークの咬みつきを躱し、刃がボロボロの短剣に魔力を纏って頭部に近い場所を切断する。


「うん、この技術にも慣れてきたな」


ゴブリンやコボルトといった人型のモンスターが偶に武器を持っていることがあり、そのお陰でティールは武器系のスキルを得ることが出来た。


だが、その武器を使うにはティールでは少々腕力不足であり、刃を研ごうにもやり方を知らず、砥石だって持っていない。


なので、拾い物の武器ではモンスターを相手に扱い辛い。

そこでティールは酒場の冒険者から聞いた武器に魔力を纏うという方法を思い出し、それを必死に何度も繰り返し行い、実戦で自分の技術へと落とし込むことが出来た。


だが、まだそこまで魔力量が多くないティールは戦闘が開始してから継続して武器に魔力を纏わせるのではなく、攻撃の瞬間にだけ魔力を纏っていた。


魔力の節約と考えての行動だったが、ティールのそれは最も正しい行動だった。

寧ろ常に武器や体に魔力を纏うという技術を得てから、必要時に応じて体の一部に魔力を纏う技術を身に付けるのが一般的な流れであった。


それを一段階飛び越え、ティールは無駄の無い攻撃方法を覚えた。


「ファイヤー」


生活魔法で使えるうちの魔法、ファイヤーを使って落ちていた枝に火をつけてバインドスネークの肉を焼き、思いっきりかぶりつく。


「うん、相変わらず美味いな」


五分と掛からずバインドスネークの肉を完食し、他のモンスターがやってくる前にその場から立ち去る。


因みに、ティールはこの二年間でスライム、ゴブリン、ホーンラビット、ボア、バインドスネーク、オーク、クロウキャット、ハングルバード、ウッドモンキー、コボルトといったモンスター達を一人で倒していた。


そしてスキルは酸、剣術、棍術、突進、脚力強化、拘束、毒液、赤外線感知、爪撃、気配感知、嗅覚上昇、腕力強化、飛行、風魔法、木魔法、体術。


これらのスキルを得た。

だが、全てのスキルを自由自在に操れている訳では無く、飛行に関してはどう扱えば良いのか全く解っていない。

それでも八歳児が得られるようなスキル量では無く、既にティールは同世代と比べて何歩も先を歩いていた。

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