第3話
ナマコが高級食材として珍重されていると聞いた少年は干しナマコを造り、武唐の大都まで売りに行く事にした。
大都は武唐の皇帝が住まう都。つまりは首都であるが、少年にとっては人が多く商売に向いた街であるという認識でしかなかった。
大都には武唐各地から様々な人が訪れていた。近隣諸国からも人々が訪れていた。
あの門番の役人にペコペコ頭を下げているのは二階国という国から来た使節で皇帝に貢ぎ物を持参したそうだ。
「私は二階国から来た者です。医者と薬を貢物としてお持ち致しました。是非とも武唐国でお役立てください!」
二階国の使者は言った。
「そうか。貢物として医者と薬を持ってきたのか。それはご苦労である」
門番は言った。
「ところで、医者と薬を貢物として献上してしまって貴様の国は大丈夫なのか?」
「大丈夫でございます!我が二階国の命よりも貴方方武唐の国の方が私は大事なのでございます!!」
二階国の使者は言った。
「そうか!それは良い心がけだな!!医者と薬は有難く受け取っておこう!!」
「そうだな。それにしてもこんな命令を下す奴が政治や外交をしているとはな。二階国の民衆はさぞかし苦しんでいるだろうな!」
「まぁいい。二階国の使者よ。貴様に褒美をくれてやろう。尻を出せ!!」
「ハイ!ヨロコンデー!!」
二階国の使者は尻を出した。その尻を門番は棒で叩いた。
「どうだ?尻をぶってやったぞ?うれしいだろう?」
「アイーーーン!!さ、さらに貢ぎ物を差し上げまする!!ここに我が二階国の農民達が三百年もかけて品種改良した宝石葡萄がございます!!こちらを差し上げますので是非とも武唐国でお育て下さいませ!!」
「なにっ!!お前達の国の農民達が三百年もかけて品種改良した葡萄の種を我が国にくれるだとっ!?しかも品種改良した農民達に断りとなくとなっ!!農民達が直接我が国に売りにくれば莫大な利益が得られらのに貴様の一存のみでそんなことをしてしまってよいのか?」
「はい!我が二階国の農民よりも武唐の農民の方が私は大事なのでございます!!」
二階国の使者は言った。
「それにしてもお前は立派な着物を着ているな?どうやって手に入れた?」
「私の国。二階国では貴族王族の上級国民だけが豊かな暮らしだけをしているから当然でございます!私は毎日分厚い牛ステーキ。平民共は納豆ご飯で腹を満たしているのでございます。だからでございますよ!!」
「なるほどな。よくわかったぞ。ではもっと褒美をくれてやろう。服を脱ぐのだ。代わりにこのお盆をくれてやろう」
「ハイ!ヨロコンデー!」
二階国の使者は服を脱いでお盆を受け取った。
「そのままはだか踊りをしろよな」
「ハイ!ヨロコンデー!」
「そのまま国に帰るんだな。山歌和とか言う街であったか。貴様にも故郷があるだろう」
「ところで、この国の王様とお会いしたいのですが?」
「王は忙しいのだ!貴様のようなやつにはお会いにはならん!あと、貴様の服は俺が古着屋に売り払っておくから安心するがよい!!」
「ねえお母様。道にお風呂でもないのに裸の人が」
「見てはなりません!子供を連れて買い物になど出るべきではありませんでした!!召し使いにやらせておけばあんな外法の地から来たものなど見ることもなかったでしょうし」
貴族らしい女性は子供を連れてそそくさと帰って行く。
干しナマコを作った少年はとても頭がよかったので。
二階国の使者と仲良くしても利益にならないと思った。
代わりに先程の貴族の後を追いかけると、家まで行ってナマコを売ることにした。
貴族の庭には牛車があった。
「あれはなんですか?」
「あれは牛車ですよ。普段はあれに乗ってでかけるのです」
貴族の女性は答えた。
「そうですか。では七日後。生きた海の魚を御用意致しましょう」
「そんな。生きた海の魚なんて食べられるわけないでしょう」
「いえ。できますよ。七日待ってください」
七日後。少年は牛車に乗せた海水の桶で魚を運び、大都までやって来た。
もっと金持になった。
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