第14話 ばあちゃんの書斎から……
晩めしを終えて、観たいテレビ番組もなく、紅茶(お買得の安いやつ)を優雅っぽく飲んでいると、メールの着信音がピロリンと鳴った。見ると、じいちゃんからだった。
一樹、じいちゃん家でちょっと変わったことがあったんだ。
ばあちゃんが亡くなってから五年経つが、じいちゃん、まだちょっと寂しい
でもな、ばあちゃんが久し振りに夢に出てきたんだ
ニコニコ笑ってた、オレ、嬉しかった♪
で、言うんだ「一樹に伝えて、お花、ありがとう。それと、あの手紙、読んでね」って
オレ宛じゃないの、ちょっと寂しい…
けど、伝えたぞ。何か分からんけど
それからな、今朝、ばあちゃんの書斎に入ってみたんだ、そしたら、何故か机にまだ新しい花束が置いてあったんだ
普通、気味悪いよな?でも、オレ何故か嬉しかったんだ
ホント、何でか分からんけどな
あと、ばあちゃんが描いた本を何冊か送るから読んでみてくれ
もう大人になったから、理解できるはずだよな
すまん、送るように頼まれてたのに忘れてたわ、六年もな!ハッハッハ!
今日送ったから、読んでくれ!ばあちゃんも喜ぶわ
とりあえず、花束の写真撮ったんで添付するよ!
じゃ、またな
「う~ん、何だかなぁ」
やな予感でいっぱいの俺。
添付の写真を確認すると、ビンゴです。
「俺が置いたブーケだわ」
あの時、繋がってたんだなぁ……
あの図書館って、何だったんだろう?
分からないけど、まあ良いや。怖くはなかったし、お菓子も紅茶もうまかった!翡翠さんもエルブさんもいい人だ!
もう、それで良いよな!
「手紙?思い当たるのはアレだな」
棚に置いていた小瓶を取って、座布団に座ると、蝋を削り取り蓋を開けた。
翡翠さんも読んで良いって言ってたもんな。
さて、何て書いてるのかな?
一樹へ
たくさん本を読んでいるようですね、良いことです
よくこの手紙を見つけましたね。感心感心。
ばあちゃんが書いた本を一樹に送るようにじいちゃんに頼んでおきますから、読んでくださいね(六年も忘れていたとは、ばあちゃんプンプンです)
本の内容はきっともう理解できると思いますよ
それから、翡翠さんはばあちゃんの友達です、何か相談事などあれば聞くと良いでしょう
きっともう、近くにいると思いますよ
仲良くして損はないはず
さて、3334冊目からの読書も楽しみにしてますね(3334冊目は、是非ばあちゃんの本を!)
では、またね。
ばあちゃんと翡翠さんが友達ですと?
新しい事実が判明してしまった。
もう、近くにだって?何かもう、色々起こりすぎて、一樹さん分かんな~い!
そして、月曜日に受け取った本を見て、またまたびっくりしてしまった。
数冊の本が届いたんだが、その中の一冊の絵本のタイトルが……
『いろんな まど』
だったんだ。
その時、アパートの扉をノックする音がした。あ、呼び鈴て言うの?付いてないんだ。
「は~い、どちら様ですか?」
「隣に越してきた者です~。ご挨拶を、と思って~」
この特徴ある語尾、何だか懐かしいような……
「ああ、ご丁寧にありがとう……翡翠さん!?」
「はい~、三日振りですね~」
「何で隣?」
「これで、いつでも我が図書館に来られますね~」
見ると、隣の部屋の扉が、あの図書館の扉に変わっていた。何故?
開けると、あの広い図書館だった。何故?
「実はですね、水瀬様のおばあ様なのですが、実は……」
「待って!もう少し異世界の事、勉強してからで良いですか?」
「宜しいですよ~。ごゆっくり。しばらくはこちらにおりますので、いつでもいらしてくださいね~」
「お待ちしておりますよ」
「エルブさんもいらっしゃったんですね。あ、帽子!」
「予備がありますので、大丈夫です」
「はぁ、そうですか……」
いくつ予備持ってるんだろう?
それにしても、図書館裏の図書館が、俺んちの隣の図書館になってるよ。
ニコニコと、隣の図書館に戻って行く二人を見送ると、そっと自分の部屋の扉を閉めた。
その後、翡翠さんとは頻繁に挨拶を交わすようになり、仲良くなっていくのだけれど、次に隣の図書館に行くのは少し後になる。
ばあちゃんの事も含めて、機会があれば、また話をしに来るよ。
ある図書館へ招待された俺の、ちょっとした散歩の話 瑠璃珊瑚 @ruri-sango
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