第18話 被害者の被害者

 松崎は休校明けから絶賛、休学処分を受けている。期間は不明だ。俺は処分の対象にはならなかった。恐らく、口止めだろう。仕事を増やすなよ?そう言われている気がした。


 教室が急にざわつき出す。


「慶ー!田中さんが話したい事があるって。」


 直ぐ後ろに田中さんと美優がいた。


「お初です!御用件をお伺いしても、よろしいでしょうか?」


 田中さんはニッコリと笑い切り出す!


「私の名前を勝手に使用した件について、是非お聞きしたいです。16.5センチさん?」


 ついにバレた。田中 美玲たなか みれいと言う名前を使い、グループラインで俺の相棒を褒めた事がだ。かなりお怒りです。隣のクラスでは聖女と呼ばれている人気の高い人物。お怒りですが。


「あの〜その呼ばれ方は恥ずかしいのですが…」


 ピクッと頬が動き笑顔のまま表情を固めた。


「男のモノを褒めた女だと学年中から思われている私の方が恥ずかしいのですが。今、私は何故か経験者と呼ばれています。最近では定規で測定されている卑猥な画像が色んな人から届きます。」


 そう言って携帯を見せられた。うっわー。自分以外のブツは見てて気分が悪い。


「臭そうですね…」


田中さんに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。田中さんは目に涙を浮かべている。謝ろう…



「勝手に名前を使いすみませんでしたー!」


 俺は土下座を決め込む。これで許されるものだろうか。バンッと俺の額は床に押し当てられた。頭を踏みつけられたのだ。悪魔め…足を退けて田中さんは手を差し出した。美しい聖女の様な微笑みを浮かべて。


「貴方の罪は今、許されました。」


 俺は田中さんの手を取り、抱き締める。


「え?」


 何がなんだか分からないって感じの声を聞き、仕返しを始める。


「聖女様ー!お許し頂き、ありがとうございました!愛しています!大好きです!」


 胸に顔を擦り付けながら、叫ぶ。めっちゃ恥ずかしい。普通に犯罪かも…聖女様は声にならない声を上げている。誰か止めろや!


「辞めんかい!」


 そう言って美優に止められた。擦り付けるのマジで疲れた。田中さんは綺麗なお顔を真っ赤にしている。

周りからは歓声の声が聞こえた。


「聖女様!お優しいです!」

「流石、聖女様!」

「聖女様!今日も可愛いです!」



 今も聖女様を称える声が続いている。


「聖女様!また、お願いします。」


 俺は頭を下げた。あの胸は最高だった!田中さんは冷め始めていたお顔を真っ赤に染め上げる。周りはヤジを飛ばす。


「ドMかよ笑笑」

「聖女様!自分もお願いします!」

「聖女様!俺の相手も!」


 俺は田中さんの手を取り、言った。





「俺の女に近くんじゃねぇ!愛しているって言っただろうが‼︎」


 田中さんは力が抜けたのか枝垂れしだれかかる。そっと支えた。


 美優が耳元で言った。


「慶の彼女、誰だっけ?」と。俺は田中さんを保健室に預けてから美優のもとに戻る。


「美優さんが1番好きです。」


「私も慶が好き。」


 そう、微笑みを交わしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

後悔したく無い! 降花 @huruka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ