27作品目

10話.[あとはやっぱり]

「え、結局光から言われちまったのか？」

「うん、情けないんだけどね」

　それはまたなんとも言えない気持ちになりそうだ。

　求められて嬉しいという気持ちと、自分から言えなかったという悔しさと。

「でも、良かったな」

「うん、ありがとう、そっちも良かったね」

「ありがとな」

　こっちは綾祢を奪ってしまってちょいと実は引っかかったままだ。

　けれどわざわざ言わない、綾祢が好きだと言ってくれたんだからいいだろう。

「浩二は綾祢の隣に行って」

「あいよー」

　別に俊を取ろうとはしないぞ？　好きな人間と同性の人間も敵に見えてきたのか。

「私は浩くんが言ってくれて嬉しかったな」

「家から追い出してくれた少女がこの人です」

「恥ずかしかったんだもん、それに怒って追い出したわけじゃないからね」

　結果は同じなんだから内にどんな感情があろうが変わらないと思う。

「私は俊に言わせたくなかった、だって俊は優しすぎるからその気はなくても口にしたりすることがあるから」

「でもさ、結局好きだと言っちゃったらいつもの悪い癖で受け入れちゃうんじゃない？」

「う……い、いや、俊はそういうことに関してははっきりしてくれる……から」

　早口になるところが面白いな。

　けど、相手のそれが本心からかどうかを確認する術がないから気持ちは分かる。

　とにかく確かめないと怖いんだ、自分から動いてしまった方が楽なときもある。

「流石に同情で付き合ったりはしないよ、僕はちゃんと光のことを好きだから受け入れたんだ」

「俊」

　おいおい、店で見つめ合ってくれるな。

　一応俺らもいることを考えてほしかった。

「ふふ、だから言った通りだったでしょ？」

「ああ、お似合いって言ったやつか、確かにそうかもな」

「でしょっ？」

　……今更俊の魅力に気づいてほしくないからな。

　この独占欲だけは上手くコントロールしないと後に困ることになりそうだ。

「帰るか」

「そうだねっ」

　結局、いま集まってもすぐに解散となって別々に行動することになる。

　だけどこれがいいんだよなあ、やっぱり好きな相手とだけいたいしな。

「ね、今日はリベンジ……」

「そうだな、じゃあまた食事と入浴を済ませたら綾祢の家に行こう」

「うん！　今日は帰らせないから！」

「帰らねえよ」

　それでも４人でずっといられるように願っておこう。

　あとはやっぱり、綾祢といつまでもこの関係でいられるようにと願っておくか。