第6話 クエスト

「やっぱりやりやすいわ。慣れればもっと先も楽に進めそうね」


「もっと先?」


「洞窟ってのは魔物の巣窟ってのは言ったわよね。当然ボスがいるの。採集クエストだからわざわざ戦う必要はないんだけど」


「戦わない方がいいだろうな。ハッハ」


 ボスとか言われるとちょっと怖いな。


「その前に多分この洞窟の攻略クエストも進行中だと思うんだけど……その割に人の気配を感じない、なのに魔物の遭遇率が低い気がするわね」


 サーサラは手をあごに当て、考えるような仕草をする。


「なんかそう言われるとそんな気がするな」


 同じ洞窟やダンジョンで並行してクエストが依頼される事はよくある。採集クエスト、見つかったばかりの場合は攻略クエスト、調査クエスト。


 まあ深くは知らないが。


 ガルドの七番洞窟は比較的最近見つかったものだ。攻略クエストを受けた冒険者達がいてもおかしくない。まだ魔物が出るって事は攻略は済んでいないということになる。


「考えたってしょうがないわ。私たちは採集クエストに専念しましょ」


「そうだね」 


 俺たちはある程度進んだが誰とも会うことなく、カルライト鉱石を発見する。洞窟の一室、最深部ではないがカルライト鉱石が壁から突き出るようにくっついている。


「こんなもんかな。サーサラはどうだ?」


「少しでも多く持ちたいけど帰り道が危険すぎるのよね。ジグルスは持ちすぎね」


 あ。バレたか。

 袋いっぱいに鉱石を入れ十五キロ程だろうか。


「すいません」


 半分ほどに減らす。


 サーサラも袋に詰め終わり移動を開始する


「帰りましょ。帰りは急ぐわよ」


「よし、帰るか」


 重くなった身体で部屋を抜ける。

 ザザァッ。

 何だ!


「サーサラ、魔物だ」


「え!何も感じないけど……」


 部屋から出た通路の両サイドから魔物達が襲いかかってくる。

「一旦下がるわよ」


 俺はサーサラの指示に従い部屋に戻る。

 挟み撃ちになるのは避けたいからだ。


 挟み撃ちを避ける事はできたが追い込まれたのはあまりいい状況とはいえない。

「どうする?」


 サーサラは少し考え、


「ちょっと試してみたかった技があるの。それをやってみようかしら」


 と持っている剣を強く握る。


「おいおい、大丈夫か?この状況で試すって」


 何をするんだ?


 気になるが今は


「俺は何をすればいい?」


 俺も剣を構える。


 魔物は部屋の前で減速し一斉に入り込んでくる。


 先頭で入ってきた五体のゴブリン部隊、それに続いて空を飛ぶガーゴイル、人食いプラント。数は多く魔物同士が隊列を組んでいる。


「嘘だろ。魔物達がこんな隊列を組むなんて、ダメだろ」


「本当ね、もしかしたら誘い込まれた可能性があるわ」


「そんな冷静に考えられないんだけど!」


「落ち着いて」


 一息入れる。


「ジグルスはゴブリンへの牽制して、プラントの毒だけ注意して」


「分かった。じゃあ、始めるか」


 戦闘は開始する。


 俺は状態の良いものとは言えないが鎧を纏い、切れ味の悪そうな短剣を持つゴブリン部隊に対し、威嚇するように剣を勢いよく周りにある採集しきれなかったカルライト鉱石にぶつける。


 これはタンクをしていた時に気づいたが魔物は基本的に耳が良い。


 ガーン‼︎


 という音に戸惑いを見せる。だがおそらく耳の存在しないプラントには効果がない。


 一定の距離をあけプラントは一斉に口から毒を吐く。当然悪口を言われたわけではない。


 動きが分かることを生かし、後ろにステップしながらほとんどは避け、効くのかどうか分からないがプラントの毒を数発ゴブリンに剣の腹で跳ね返す。


「効いたらラッキー!」


 後ろで何かをしているサーサラ。


 一人でも結構冷静に立ち回ってんじゃないか?


 ゴブリンに毒が効くはずも無く、ガーゴイルと共に俺に襲いかかってくる。


 マジかよ。


「サーサラまだか? まずいんだけど」


 ここでもし切りかかって、止められたらめったうちにされるぞ。


 突進してくる魔物達にいくら行動が分かっていてもどうすることもできない。


「もう良いわよ。下がって!」


「よし。頼むぞ」


 俺は大きく後ろに下がる。

 それと同時にサーサラは前にでる。


 白く光る剣を片手に大きく振る体制で叫ぶ、


「食らいなさい! 『曲がる一刀 ロンペルアソード』!」


 剣を横に大きく振ると収束していた光は放たれ斬撃に変わる。斬撃は激しく縦に数回曲がりながら広範囲に大きなダメージを与える。その攻撃で残ったのは数匹のプラントだけだった。


「後処理は俺が」


 プラントの口に沿うように剣を振り、難なく倒し切る。


「終わった、わね」


「あぁ。それにしてもさっきの技はなんだ? あんなこと出来るのか?」


「この剣を見て」


 サーサラがずっと使っていた剣をよく見るとギザギザとした模様のような窪みが存在する。


「この模様がなんかあるのか?」


「そうよ。この剣は斬撃を折り曲げる事が出来るの。剣の扱いは才能紋の恩恵もあって出来たけど斬撃を飛ばすためのマナの付与はやっぱり時間がかかったわ」


 マナとは魔法の原動力、道具に付与も出来るらしい。剣だった場合、攻撃範囲を広げるなどが出来る。


 出来るのは知ってたけどこんな使い方をするのか。


「ということはその剣は結構高価な代物なんじゃないか?」


「数日前にやっと完成したんだから」


 オーダーメイドってことか。


「すげーな」


 没落貴族じゃないのか?……クエストで稼いでるんだろうけど。

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お見通し冒険者は出直します 竹広木介 @09192001

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