第22話 マリファナと酒漬けに

 家で静養しながら酒を飲んでいた私は、ギターの練習をしていた。相変わらずサンタナ、そしてフォア・プレイ時代のラリー・カールトンなど。家の近くには夜ライブをやっているカジノバーがあった。ガイド時代に一度見に行ったのだが、観客は満員であった。料理はポークを食べたが、ソースが非常においしかった。


 そのことを思い出し、昼に行ってビールを飲んでいると月曜日にブルース・ジャム・セッションがあると店員が教えてくれた。そのジャム・セッションというのは、何なのか聞くと誰でも演奏に参加できるセッションだと言う。丁度、そのころ、交通事故の保険金が二百万円がおりた。


 そして、カジノ・バーにギターを持って月曜日の夜に行ってみると、やはり混んでいた。店員に、誰に参加を申し出ればいいのかを店員に聞くと、そこにいる白人の大男だと言う。彼は、アルというギタリストで、音楽スクールでもギターを教えていた。彼に、弾きたいと言うと分かった、弾きたいときに俺に言ってこいと言われた。そして、次に弾きたいと言うと、彼は私をステージに上げてくれた。


 私は、ブルースを基本としているギタリスト是方博邦、サンタナ、そして、ピンク・フロイドのデイブ・ギルモアなどのコピーをしまくっていたので、自信があったが、やはり、本場アメリカのミュージシャンの中では、話にならなかった。


 そこで、家でワインをジュースのように飲んで、ギターを練習していた。また、このブルース・ジャム・セッションというものは、他のカジノバーでも開催されていることを知り、そこへも足を運んでいた。


 あるバンドには、飛び入りもさせてもらっていた。マンダレーベイ・ホテルにあるハウス・オブ・ブルースのレストラン・バーでの演奏だったが、リーダーは、黒人のワトソンと言って元DEA(麻薬取締局)の職員の人だった。この時ばかりは、私は酒は、飲まずにステージに上がっていた。また、Willie J Lawsという、大物のブルース・ミュージシャンと共演した事もある。


 私は、この三か月間、ジャム・セッションが徐々に意外と受けて、有頂天になっていた。無理やりキスした女性のお父さんがマフィアで怒られたこともある。ある夜、バーでワトソンと飲んでいた時、お前アメリカにこれにしに来たんだろうと言って、彼は双眼鏡を目にやるポーズを取った。スパイの意味である。そして、マリファナも吸っていたし、酒の勢いも手伝って恰好をつけて、私は「はい、そうです」と答えてしまった。彼は、最初から分かっていたさと言った。これが後を引いてしまった。


 食事は、スーパーで安い食材を探した結果、ニンジン、ポテト、セロリ、チキンであり、それらにお米を入れて、チキン・ライス・スープを作っていた。そして、知り合いになった人たちとバーで演奏して酒を飲んで、マッサージ・パーラーに行くという、遊び人の極地みたいな生活を送っていた。

 

 滞在ビザが切れる一か月前に、ボストンの吉本と話をした。彼には、「単なるアル中じゃないか!即刻帰国しろ!」と言われた。実家は、マンションに引っ越していたので猫飼いが可能であった。しかし、猫は、箱に入れられることや小さなケージに入れられるとをものすごく嫌がった。そこで、私はカジノバーで猫を飼ってくれる人を探した。


 何人かには断られたが、もう亡くなったインディアンのギタリスト、ドニーと彼のワイフ、ジョイスが飼ってくれることになった。まさに恩人である。フェアウェル・パーティを高橋君、ケリー、ジュリア、ジャック、そしてジャムセッションで仲のよくなった人たちがとが開いてくれた。また、遊びに来てくださいよ、と高橋君は言ってくれた。


 そして、帰国となった訳だが、飛行機の中で、キャビン・アテンダントに無断で、ハッチから酒を取り出して怒られ、トイレでタバコを吸いものすごく怒られた。男性のCAは、真っ赤な顔をして、お前をハワイで降ろしてやろうか!と言って機長に連絡した。飛行機の延滞金など数千万円かかる。そんな借金抱えるのかと思うとゾッとした。緊張している私を彼は見て、お前座ってじっとしとけと言い、素直に従った。ただ、私は、帰国してからは酒を止めてジムに通って健康的な生活を送ると決意していた。

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