第4話 暗黒の中学時代
私の中学校時代は最低最悪だった。背が低かったし、とにかく体が細くバカにされていた。
また、名前も変わっているし眼が吊り上がっていたので「お前、チョンコやろ?白状せえや!」と言って、私の頬に平手を張るやつが出てきた。
チョンコとは、大阪で朝鮮人に対する侮蔑の言葉である。そして、別の奴にも脅されていた。こいつは、中1にしてウェストが一メートルもあるという奴だった。
彼のお兄さんは、暴走族のヘッドだという噂もあった。カツアゲもされたが、金額は50円だけだった。
また、私をビンタするやつと猫をマンションの屋上から落としていたと聞いた。彼らの行動は私をまた、極度に怯えさせた。
何しろ、その当時の私の癒しは飼い猫だったからだ。また、私に少しでも戦うという気概があればよかったのだが、逆らったら殺されるという恐怖で中学三年間は支配されていた。
三年間。実に長かった。私の脳は、相当なダメージを受けていると思う。軽いPTSDなのかもしれない。
フラッシュバックはないが、私は長時間寝ないと気がすまない。そして、ウェスト一メートルは今でも夢に出てくる。
ただ、この当時、私は弟をイジメていた。負の連鎖だ。私は、一発彼にビンタをしたのはおぼえているが、そんなものではなかった。溝が現在もあり、本当に申し訳なく思っている。
中学のクラブは、テニス部に入った。本当は、柔道部に入って体を鍛えて、みんなを見返してやろうという気持ちもあった。
しかし、柔道部の部室の近くまで行くと足が立ちすくんで入部できなかった。
また、テニス部の練習もきつく成績が落ちてきたので、母にもう、クラブやめたら?と言われ、私も練習がきつかったので、やめると答えた。
後悔先に立たずである。育ち盛りに体を鍛えておかないと、取り返しがつかないと思う。鉄は熱いうちに打てだ。
私は、テニスはやめたが、勉強はまじめにやっていた。将来一流大学を出て、一流企業に入ることを当然と考えていた。
しかし、勉強の内容が、なかなか頭に入ってくれなかった。この当時の私の楽しみと言えば、放課後のテレビで見る刑事モノの番組。
それから、音楽。邦楽はクリスタル・キングの大都会、洋楽はブルース・スプリングスティーンのハングリー・ハート、が記憶に良く残っている。
中学1年生の時に、韓国では朴正熙(パク・チョンヒ)大統領が暗殺され、全斗煥(チョン・ドゥファン)のクーデターが起こり、後に民主化を要求する光州事件へとつながった。
少し海を越えた国では、大統領が側近に殺されるのかと思うと深い闇を感じた。
また、2年生の時にイランアメリカ大使館人質事件が起こった。さらに、ビートルズのジョン・レノンが射殺された。
私は、ジョン・レノンについては、あまり知らなかったが、有名人だから殺されてしまったのかなあくらいにしか思わなかった。
中学3年生になるまで成績に伸び悩んだが、私立は桃山学院高等学校に、そして、公立は大阪府立箕面高校に合格した。
この3年生の卒業の頃、私は高校に入ったら何が何でも空手を始める気でいた。
他人にバカにされるのは、おさらばだ!体を鍛えるんだ!俺は、喧嘩に強くなるんだ!という切実なる思いからであった。
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