1−3「ドアの向こうにいた何か」
…死んだ目をした人間、それはガラスに映った僕の顔。
清掃中のロッカーにどこから伸びてきたものか、赤黒い色をした巨大な触手がぶつかり、扉から飛び出した鏡の破片が散っていく。
ふと横に顔を向ければ奥のドアがへしゃぎ、さらなる触手が伸びて、瞬時に2人の研修生が跳ね飛ばされる様子が見えた。ドア付近にいた男性研修生1人の頭部がなくなり、金切り声を上げる女性研修生に長い触手が伸びていく…そこに指導員の女性が簡易清掃機から自動式の小型拳銃を二丁取り出すと、続けざまに扉の向こうへと発砲した。
パンパンパンッ…連続で合計10発。
硝煙を上げる銃を持ちながら彼女は首を振る。
「まだいるじゃない。このエリアのエージェントは誰だったっけ?あとで報告書に誤りがあるって訂正してもらわないと…それと、まともに動けそうなのは」
そして彼女は棒立ちになった僕を見つけると、銃を投げ捨てこう言った。
「あ、ガラス刺さってるじゃない。今取ってあげるから」
女性指導員は手を伸ばすと僕の防護服の眉間あたりに刺さった10センチほどの鏡のかけらをズブリと抜いて、ゆるゆると振る。
「よかったわね。その防護服は軽くて薄いけど防弾チョッキと同じ強度を持ってるわ、普通だったら貫通して死んでいるレベルだから儲けもんよ」
それに僕が答える間もなく、指導員は腰につけたスマートフォンを取り出すと「あーあー」と言ってからこう続けた。
「こちらコードネーム・ドグラ。研修清掃中に活動していた対象に襲われて1名が死亡、2名重症、対象の一体はこちらで処理。至急、エリア担当エージェントと救護班を招集要請、こちらは生存者2名を連れて本社に戻る、以上」
そしてピッとスマホを切ると彼女は簡易清掃機を引き寄せ、未だ震えて動けない女性研修生を無理やり起こして僕にぽいっと投げて寄越す。
「二人とも今日は得したわね。こういう場合はエージェントと撤去班に非があるから、清掃業務は半分以下になるのよね」
嬉しそうな女性。僕は未だ震えの止まらない女性研修生に肩を貸しつつ、彼女に促されるまま、外へと続くエレベーターに乗り込むことにした…
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