肆.王となり
王となりて、かなりの時が過ぎたある日の夜、ジャキアの部屋を訪れる者がおりました。扉の向から聞こえる声に聞き覚えがあり、扉を少し開けました。あの日から姿を見ることがなかった夜神が、そこには立っていました。ジャキアは驚き、動くことができませんでした。夜神はそんな兄に笑顔を向けて言いました。
"ただいま、兄様"
夜神はその日からジャキアの側近として、城に戻ってきたのだった。
それからのジャキアは、一層国王としての努めを果たし、夜神は王の側近としてジャキアを支えた。二人が治めるこの国は国民が安心出来る、素晴らしいものでした。
しばらくは安泰の世が続きましたが、悪巧みをする神が出てくるようになりました。その数は多く、城の牢では足りなくなるほどでした。そして、牢を出ても同じ過ちを繰り返すものが後を絶ちませんでした。
困ったジャキアと夜神は一つの星を創り、そこに牢獄を作ることにしました。
しかし、ただ一つ問題がありました。それは、その牢獄を見守る番人を誰にするかということでした。
ある日、ジャキアに対して他の神々が言いました。
“夜神様を監獄の番人になさるといい”
ジャキアはその言葉に耳を貸しませんでしたが、たまたま通りかかった夜神はそれを聞いていました。夜神はジャキアに言います。
“私を監獄の番人になさってください”
ジャキアは断りましたが、夜神は続けてこう言いました。
“番人の仕事は皆が嫌がる仕事です。それを嫌がるものにさせてはしっかりと務まりません。それに兄様の信用あるものがやるべきです。その二つの条件にあてはまる者は私しかいないでしょう。ですからお願いします。私を番人になさってください”
番人の仕事は暗闇の中の囚人達を見張ることです。それは番人も暗闇の中に居続けなければいけません。それが、ジャキアの決断を渋らせました。しかし、ジャキアは切実に訴えかけてくる弟に負け、夜神に番人の仕事を任せました。
兄は理想の世を創るべく、世界を創り、世界を壊すを繰り返しました。
弟は暗闇の中から兄の創った世を見守りましたとさ。
おしまい。
はじまりの神様-序章- 月白藤祕 @himaisan
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