成人の儀の後

成人の儀の後、ジャキアは夜神やみが神の間から去った後もその場に残っていました。いえ、動けなかったのです。まさか夜神が自分を犠牲にしようとする提案をするとは思わなかったからです。それに、自分たち兄弟にそんな運命があるとも知らずに、兄弟二人で王になれると疑いもしなかった自分に腹がたっていたからです。


かなりの時間が経った時、従者によってジャキアは部屋に連れていかれました。ベッドに入り、明日の引き継ぎ式で自分はどうするべきなのかを夜の間ずっと悩みました。その夜は彼にとって、とても長い夜になったことでしょう。



一方で、夜神は国王の部屋を訪れていました。夜神を抱きしめて、何か言葉を交わしたようでした。夜神は手短に何かを伝え、その日のうちに国を出ました。息子のいなくなった部屋で、一人涙を流す国王の姿を見たものはいないでしょう。


次の日。国王の引き継ぎ式の時がやってきました。

ジャキアは重い足を引きずり広間に向かいました。一睡もできなかったのか、顔色は良くないようにみえます。


ジャキアは神の間に向かう道すがら、夜神の姿を探しましたが見つかりませんでした。周りの者に聞いても、昨夜から見ていないと言うのです。とても嫌な予感がしましたが、式の時間まで時間がなく、周りの者たちから急かされ、神の間に向かうことになりました。


広間に着いてもやはり夜神の姿はありません。しかし、ジャキアが広間に入ってすぐに引き継ぎ式が始まりました。不思議なことに、だれも夜神を探そうとはしませんでした。まるで最初から存在しなかったかのようです。そして、国王は皆の前に立つと、ジャキアに向かってこう言いました。


"今日からお前が国王だ"


あの日最後まで夜神の姿を見ることはなく、父王は何も言わずに王位を譲り渡し、王宮から離れた場所に移り住むこととなりました。そして、時は刻々と進んでいきました。アルテリアは死に、国王として政をし、妻を迎え、子供は3人できました。


誰にも話すことのできない弟のことを胸に秘めながら、王は一人歩んでいくのでした。

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