狂人作家
マドカ
狂人作家
「またダメか、、、」
パソコンの電源を落とし、
頭を抱え、ため息をつく。
私は3年前に芥川賞を受賞した作家だ。
3年前の著作は50万部売れ、
人気俳優により映画化もされた。
内容はミステリー。
当時は随分といい思いをさせてもらった。
ありとあらゆる接待を受け、
芸能人とも飯を食い、酒を飲み。
今までの人生では見向きもされなかったような女を何人も抱いた。
、、そう、自分でもわかっている。
調子に乗りすぎたのだ。
出版社からは次回作を急かされ、
私も確固たる自信を持ち執筆し出版した。
しかし
なんと売上は1万部もいかなかった。
今ならわかる、
文章、単語、ストーリー全てにおいて
受賞作に秘めた情熱がないのだ。
ありきたりなストーリー、ありきたりな設定。
自分で読んでも飽きる。
駄作だ。
駄作を生んだ作家に対し、世間は態度を一変させる。
期待はずれと罵られ、原稿料も下がる。
担当編集は「次こそですよ先生!」と励ましてくれたが、
私は知っているのだ、彼が我が家の外で「あの人はもうたぶんダメですよ、新人作家見つけましょう」と電話していたのを。
結局のところ、
自分の身は自分で守るしかない。
そして今日もまた躓いているのだ。
いや、何、ストーリーも、設定も我ながら受賞作を越える話はあるのだ。
ほら、見てごらん!?
私の脳を!?!?
わかるだろう?
足りないのはリアリティ!!!
押し迫るような緊迫感と臨場感なのだ!!!!
妻と年老いた両親が居る。
私には最早猶予がない。。
どうする?
どうする?
どうする?
どうする?
なあ、これを読んでいるあなた、君、お前、貴様、貴方様、
私の気持ちがわかるか???
設定もストーリーもこんなに秀逸な物があるだろう!?!?!?
私の頭の中が見えるだろう!?!?
ハハハハハハハハハハ!!!!!
そうだ、いい事を考えた。
緊迫感が足りないなら
臨場感が足りないなら
私が実践し、エッセイとして発表すればいい。
何、トリックは完璧なのだよ。
そうだな、、、
君には犠牲になってもらおうか。
いや!!!!君はダメだ。
これを読んでいる。
そうだな、
取り乱してすまった、すまないすまない。
何、全て忘れてくれ。
くだらない作家の雑記だ。
狼狽えてしまって申し訳ないよ。
ところで
君の1番の親友、誰でもいい。
明日の昼、私と喫茶店でお茶でもしないかと伝えてくれないかね?
何も怪しいことはしないさ。
狂人作家 マドカ @madoka_vo
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