最終話 はじめまして

 入ってきた街の人は白い割烹着のような服を着ていた。


「こちらにアジャルタさんはいますか? こちらにいると伺ったのですが?」


 全員が街人に視線向けると、街人は少し狼狽える。

 まあ、一斉に見られたら狼狽えるよな


「あら? オバさんに何か用事かしら?」


 国王の前にいたアンジェリカが街人の方に向く。


「その恰好は助産院の人ね? ん? まさか」


 アンジェリカがハっとした。助産院の人は頷き口を開いた


「はい、その通りです、産まれました。息子さんも助産院で待っています」

「なんてことなの! 王様王様、ついに産まれたわよ!」

「そ、そうかそれはめでたいのぉ」


 アンジェリカは国王になれなれしく話しかけている、普通に考えたら首が飛ぶぞ。


「こうしてはいられないはね、すぐに助産院に向かうわよー」


 こうして、アンジェリカと一部の人は助産院へと向かったのであった


 ――

 ――――


 アンジェリカ達が助産院の中に入ると息子のアンソニーが出迎えた。


「母さん! チェイニーが頑張ってくれたよ!」


 鎧を着たアンソニーが満面の笑みで出迎えてくれる。

 彼も彼で街の人たちの避難に誘導にと活動をしていたのだった、そしてその足のままここに来たようだった。


「アンソニー、あなたはチェイニーさんについていなさいよ」


 アンジェリカも笑みを浮かべながらアンソニーをやんわりたしなめる。


「そうなんだけど、母さんにも早く報告したくてね」


 そういうとアンソニーが来た人たちを部屋に導きいれた。

 すると、赤ん坊を抱っこしてベッドから上半身を起こしているチェイニーが部屋に入ってきた人々を会釈で迎えた。


「チェイニーさん。よく頑張ったわね」


 アンジェリカは笑みを浮かべてうんうんと頷きチェイニーを見た。

 チェイニーも赤ん坊を撫でながら涙を浮かべアンジェリカを見た。


「御母さんが私達の為に外で頑張ってくれたのを聞いていました。本当に有難うございます」


 チェイニーはアンジェリカに頭を下げる。


「何いってるのよ、私は当然の事をしただけよ」


 さも当然とアンジェリカはそう言った。

 そして、チェイニーが赤ん坊を抱えアンジェリカの方へと渡す。


「御母さんだいてあげてください」


 そう言われて、アンジェリカはチェイニーから赤ん坊を渡され抱っこする。

 赤ん坊はスースーと寝息を立てている。


「あぁ、とても可愛いわね。王様、私はね英雄になったんじゃないのよ英雄おばあちゃんになったの」


 背後についてきた国王に向かってアンジェリカはそういった。


「そうか英雄ではなく英雄おばあちゃんか。そしてアンジェリカ殿の息子夫婦よ、赤子が産まれた事心よりお祝い申し上げる」


 そこでアンソニーとチェイニーは国王がいることに気付き慌ててお辞儀をする。


「よい、そう畏まる出ない。ワシは今ここへ皆の頑張りに賛辞を述べに来ているだけよ」


 国王がそう言ってアンソニー達に頭を上げる用へと言った。

 その時、赤ん坊が目を開きアンジェリカの方を見た。


「あらあら、お目覚めかしら? 初めまして赤ちゃん。私があなたの英雄おばあちゃんよ」


 こうしてアンジェリカの国を救った話は幕を下ろしましたとさ、めでたしめでたし。


 ――

 ――――


 再び挨拶を、私は語り部。

 アンジェリカ・アジャルタの物語最後までお付き合いくださり感謝します。


 さて、アンジェリカの他の人物がどうなったかを軽く語っておこう。

 マーシャ・アストリットにアーシャとゼノ、リノの四人はこの騒動の後一年ほどこの街の海底ダンジョンで冒険をした後に、アンジェリカ達に別れを告げ違う街へと旅立っていったそうだ、その後冒険者で松のランクまで上り詰めたとかなんとか、彼女たちはその後も冒険者生活を続けているとの事であった。


 ルーシア・ルルーシアはあの騒動後もアンジェリカの街のギルドで、ギルド員として頑張って働いていたそうだ。

 ギルド員として生活していたが、とある冒険者の男性とであって結婚したようでだ、結婚後もしばらくはギルド員を続けていたようだが、旦那も冒険者をやめアンジェリカの街で警備の仕事につき、幸せにこの街で暮らしていたとの事だった。


 ヴィヴィアンについては悲しい報告となる。ヴィヴィアンはビレシワの魔力の影響でゾンビとして蘇ったためか、日が経つにつれ徐々に弱っていた。

 だが、ビレシワを封じた像を封印の民の使命として再度封じた後は、動かなくなるその日まで邪神像の番を務めたようであった、封印後約一年経ったその時に再び動かなくなり骨へと変っていった。

 ルーシアがたまに様子を見に行っていたようだったので、ヴィヴィアンが骨に変わった後は魔女学園の人々とルーシアでヴィヴィアンのお墓を封印の祭壇近くに作り弔ったそうであった。


 魔女学園の人々もその後、魔女の子供たちの教育に精を出していたようだ、メルリカ婆さんも現役でまた幼き魔女たちの教育にせいを出していた。


 アンソニーとチェイニーも当初の予定である東の砦付近に新たに作られる村へと移り、平和に暮らしているようだった。


 大雑把な語りではあるがこれにてアンジェリカ・アジャルタの物語は一旦終わりとする。

 最後までお付き合いくださり有難うございました。

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オバ魔女アジャルタ ~おばさん魔女アンジェリカ・アジャルタが英雄?になるお話し~ 雛山 @hinayama2015

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