明確な答えがないままに、ただ事件だけが進行します。登場人物はあの童話赤ずきんに出てくる人たちだけ。つまり、犯人はこの中の誰か。凄惨な殺害現場の描写がリアルで、元が童話であることを忘れます。しっかりとしたミステリーであるにもかかわらず、掲げられたテーマがアンチミステリーのようでした。(めちゃ好きなテーマです)これはミステリー好きの方にもそうでない方にも勧められる、作品として完成されたものだと思いました。
静かで幻想的な文体は、間違いなく童話に相応しい。 しかし物語が内に秘めた“何か”は──哀しく、切ない。少なくとも私にはそう感じられた。 不思議な読了感を得られる良作である。