月の雫 愛を唄う
牛☆大権現
第1話
「月の雫 あなたの唇に注がれて♪
私にそっと触れてくれるの ♪ 」
世紀の歌姫と呼ばれる女がいた。
彼女は、才女であった。
その声は人種民族の別なく、人々の心に届き。
歌は、言語の壁を越えた。
世界を魅了してやまない歌姫、その名を
「ただいま~」
そんな彼女も、人間であった。
自分の家に帰ってくるや否や、台所に見える背中に飛び付く。
「えへへ~、一週間振りの
「こら、料理中に危ないだろ。
お前が火傷したらどうするんだ? 」
やがて、背中に歌姫をくっ付けたまま、料理を机に並べ始める。
「いつまでもくっついてると、料理冷めちゃうよ。」
けれども、椅子に座っても、側面にくっつきピッタリ離れない。
とても食べにくそうだが、それでも慎也は抵抗しないままだ。
「全く、
「そうかな?
私結構、有名になったんだけど」
「それは知ってるよ。
けどさ、幼稚園の時から、俺にくっついて離れない所は、同じじゃない。」
ただ笑みを浮かべるだけだ。
そんなこんなで二人は風呂に入って、就寝する。
夢を見た。
池に写るのは、自分ではない自分。
豪華なドレスを着た
「アムリタ様、どうかお逃げ下さい。
私は、殿を務め時間を稼ぎます 」
そう言ったのは、騎士のような鎧を着た男。
その顔は間違いない、
この世で誰より愛しい、幼馴染み。
目が覚めた。
飛び起きて、掌は汗でびっしょりと濡れている。
「どうしたんだ、
「
「何だか知らないけど、大丈夫だよ。
俺はもう、どこにも行かないから 」
月の光が、雫のように二人の上に落ちた。
月の雫 愛を唄う 牛☆大権現 @gyustar1997
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