十三 叫ぶ

悲鳴をあげる間もなく腰を抱えられ、逆さまに持ち上げられる。

さっきの盗人だ。攫われてしまう。

「きゃああぁぁぁ!」

観音さまに助けを求める。

すると、トンと地面におろされた。

やった、逃げよう!

駆け出した瞬間、手首を掴まれる。またもう一悲鳴を、と開きかけた口の前に掌が差し出された。

「違う!」

「え?」

「手首を掴まれたら悲鳴など上げずに、まず捻って手を取り戻せ。手が自由になったら相手の手の届かぬ場まで間合いを取って、それから助けを求めよ」


佐殿だった。

「な、な、なんで」

「なんでも何もあるか。体の自由を奪われたら、お前などあっという間に攫われて売り飛ばされるぞ。いいのか?」

「それは嫌だけど、どうして佐殿にそんなこと言われなくちゃいけないのよ」

「隙だらけのお前が悪い」

前で腕を組み、ニヤニヤ笑って見下ろしてくる佐殿。

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